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ノスタルジア

見知らぬ景色の中に
見知ったものを探そうとする
その探求の中で胸に浮かぶ感傷
きっとそれがノスタルジア
歩く道の端っこのたんぽぽ
疲れて見上げた木々の緑
どこまでも続きそうな堤防
蔦の中花が覗く河原
昨日の雨に飲み込まれた中洲
薄汚れたコンクリートの橋
それらすべてが記憶とつながり
置いてきたものたちが一瞬で背に覆いかぶさる
何一つ自分は捨てられぬのだと悟る
きっとそれがノスタルジア
誰が住むかも知らない家と
誰のものでもない小道
壊れかけたフェンスと
塗装の剥がれた道路標識
それから隣を一瞬走っていっただけの軽トラ
私がそれを知らないのではなくて
その景色が私を知らないのだろう
だからここは見知らぬ場所で
ここにいる私は旅人
愛おしい見知ったものを捨て
つまらない感傷ばかり大切に抱く
愚か者の哀しい旅路
その中で一つ、
何も変わらない、知らない空に泣きそうになる
きっとそれがノスタルジア


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