栗もナッツの味がする
ウドゥタマ!(アカ語で「こんにちは」)
たかむらです。
今回は栗のお話。
栗、といわれて連想する食べ物や料理。
モンブラン、栗ご飯、栗きんとん、甘栗……。
甘くて美味しい栗、私も大好き。
でも思いつくのは、甘く濃く味付けされたものばかり。
栗本来の味は、食べたことがなかったんだなと。
10月の半ば。
栃木県の那珂川でカヤックをした。
午前も午後も転覆し、ずぶ濡れになった。
やっとこさゴールして、シャワーを浴びて出てきたら
「おーい栗を茹でたから食べるぞー」
とインストラクターのHさんから声をかけられる。
栗?さっき落ちてた栗?
茹でるって私がシャワーを浴びてた数分でできるものなの?
と、ハテナマークでいっぱいになりながら、大きな一枚岩でできたテーブルにつく。
テーブルにはトゲの部分がない栗が転がっている。Sさんはその1個に手を伸ばすと、包丁で真っ二つに切った。
「スプーンですくって食べるんだ」
「あ、コーヒーも淹れたよ」
テキパキと準備が進む中、私はぽかーんとしていた。
断面がごく薄い黄色で、
中の実がぽろぽろと落ちてきている。
初めて見る栗の姿だった。
ほら食べな、とスプーンを渡され、
ようやく我に返って食べ始めた。
スプーンを入れると、思ったより硬い。
ぽろぽろと実が逃げるので上手くのせて口に運ぶ。
ほんのちょっとの甘みに、ナッツのあのコク。
普段食べる栗よりはだいぶ薄くて存在感がないけど、ちゃんと栗の味がする。
食感はさつまいもの水分を飛ばしたような、
ちょっとぽろぽろするけど、口の中の水分は持っていかれない、不思議な感じだった。
普段、いかに加工された栗を食べてきたのか、
この優しい味がとっても沁みる。
美味しい。
これがコーヒーとまた合う。
質素なごちそうだった。
「これで今年の栗は最後!また来年だな」
「もう木にほとんどついてないですもんね」
まだ秋が始まったばかりでも、ここの栗はおしまい。
そうやって季節ごとの質素なごちそうを味わう。
なんて贅沢なのだろう。
もうモンブランは食べられない、かもしれない。