嵯峨嵐山。借景の美術館で、イケメン在原業平に会う。 〜京都帰省便り
昨年12月18日。京都帰省中に嵯峨嵐山へ出かけたが、ふいに立ち寄った嵯峨嵐山文華館で衝撃を受けた。ハプニングあってこその旅。とは言え高尚なエピソードではないので期待なさらぬように。
●百人一首の展示が楽しめる嵯峨嵐山文華館
嵐山訪問の目的は、夕刻より開催される「嵐山花灯路」。渡月橋や名勝嵐山、竹林の小径などの幻想的なライトアップを楽しむのだ。同じ目的で集まった人混みと寒さから逃れるべく、私は閉館2時間前の美術館・嵯峨嵐山文華館に非難した。ライトアップ開始までには時間がある。
嵯峨嵐山文華館では、百人一首にちなんだ常設展と京都ゆかりの日本画企画展が催されていた。120畳の和室大広間で、リラックス&ダイナミックに日本画が楽しめる。
●企画展「木島櫻谷」を120畳大広間で堪能する
今日の企画展は木島櫻谷。近代の京都画壇を代表し、動物画から人物画、歴史画までを究めた希有な存在。日本画ファンなら是非観ておきたい企画展だろう。ふいに入った割には大当たりだ。
企画展のある2階は、美術館というより高級旅館のような趣き。窓の外には小倉山と大堰川の景観が広がり、絵画と一緒に素晴らしい借景が楽しめる。下の写真は1階外から見た小倉山と大堰川。今は枯れ風情だが、紅葉の頃は絶景となる。
2階の窓から実景を楽しむだけでも価値がある。引きの俯瞰気味で撮影したセンスの悪さに我ながら呆れるが、実際は日本画のような見事な景色だ。
120畳大広間。畳に座ってじっくり木島櫻谷を鑑賞しよう。掛け軸や襖絵など、まさに本来の目線での楽しみ方ができるというもの。夏には伊藤若冲と同時代の画家展が催されていたらしい。この環境で若冲や応挙が観られるのなら、無理してでも来たかった。
畳の間に飾られた屏風絵がダイナミック。繊細な筆致を、正座したりあぐらをかいて楽しめる。誰もいなかったので、寝転んで目を開けたときに名画が見えるという超贅沢・寝起き鑑賞を試みた。ああ、芸術指向の殿様気分。幸せ・・・
●常設展で在原業平とご対面
では1階の常設展・百人一首コーナーに移動しよう。1階は通常の洋室フロアとなっている。
2階と打って変わってシックでモダンな黒で統一。奥が百人一首展示のコーナーだ。
ここでは百人一首の歴史を知り、楽しく回遊しながら見て回る。
百人一首の歌と歌人人形が個別で飾られていた。これはテンションが上がる。
私は今、平安時代のサスペンスコミック『応天の門』にはまっているのだ。平安京を舞台に在原業平と菅原道真が怪事件の数々を解き明かす、灰原 薬による大快作である。
作品に登場する在原業平は、史実どおりのプレイボーイ。そのイケメンぶりを下のコミックス表紙でご覧あれ♡
その業平に、ここで会える。私は目を皿のように歌人の人形を探しまくった。
何度も見回すがどこにもない。
あ、ひょっとして、これ・・・・。
絶句・・・。
平安時代イケメンの現実・・・。
(それでも多分、現代の美意識に近づけて作られているのだろう)
業平との比較で撮った紀友則。私の一番好きな歌の歌人だが、惰性で撮ったせいかガラスにiPhoneが映りこんでしまった。ザツ(謝罪)。
くだらないエピソードでスペースを割いてしまったが、百人一首の楽しさを十分に味わい、美術館を出た。
●謎のワンちゃん、行列を癒やす
さて、暮れなずむ街路は嵐山花灯路を目指す人混みに拍車がかかっていた。そんな中、通りの途中で皆がカメラを向けているのは・・・
勢揃いしたワンちゃんたち。大人しく一列に並んでモデルを果たす。
そのうち飽きてきた子たちが動き出し・・・
このお三方は、最後までじっと我慢のモデルを遂行。カメラ目線の白い子ちゃん、ありがとう!
●人混み大行進の嵐山花灯路
いよいよライトアップされた竹林の小路に行き着いた。写真下方に点々と光るのは見物者行列のスマホ。もはや撮影会の様相だ。
竹林より行列の凄まじさ! 前に進めず、寒い、押される、むしろ苦行・・・。
昼間撮影した竹林。このときは人もまばらだった。今年が最後となったライトアップ嵐山花灯路、幻想的な夜歩きはもうできない。だが昼間の素晴らしい景観ならいつでも楽しめる。
まあ、こんなこともあるさ。それも思い出。