「京都丸善」を見捨て、「駅地下・古本市」によろめく
観光で京都に出かけた11月のこと。観光以外にも京都丸善に行くという大きな目的があった。
前に訪れて一目惚れ、遠距離恋愛中の大好きな彼氏に逢いに行く気分である。心躍る大好きな書店ナンバーワン。すぐに行くから待っててね。
▼京都丸善の魅力記事
新幹線を降りて京都駅地下街を歩いていると、古本市に遭遇した。
仮設の古本市だから大したことないと思いつつ、ちらりと覗く。京都丸善とのデート直前、浮気というのも良くないけれど。
ちょっと立ち寄るだけの軽い気持ちが、2時間以上ここでウロウロ。
この品揃えだ。『赤い鳥』や『それいゆ』がわんさかある。『それいゆ』は数冊手に取って読めるので、涙ながらに心してページをめくる。黄ばんではいるものの、中原淳一の美麗なイラスト、びっしりの記事にワクワク。
お値段2500〜3500円。
とにかくレトロな雑誌、洋書、広告が異常に多い。新刊はどこでも出会えるけれど、古本だけは一期一会。
古本市への浮気は本気モードに変わりそうだ。
こんなに欲しい本がいっぱい見つかる古本市なんてそうそうない。
早川書房のハードカバー『異色短編集1 キス・キス』がたったの600円だったり、もう離れられない。信じられない。どこまで私の心を掻き乱すのよ。
ほら、Amazonだとこのお値段。
文庫本で持っているけど、畑農照雄装丁の単行本はぜひ欲しい。
電子書籍しか読まない人にはわからないだろうけど、本を手にしたときの感触、重量感、所有感、昂揚感は特別なのだ。
『キス・キス』を思い切り抱きしめた。伝わる伝わる、本の魂。これでキミは私のものね。
でも私を虜にしたのはもっと別の本だった。
それがこれ、『地獄大図鑑』。
この本の惹句には、地獄のことが「いちばん新しい」「いちばん詳しい」みたいに書かれている。
本命彼氏の京都丸善をほっぽって、ここで新しい彼氏(古本市)とどっぷり浮気していることは罪だろうか。
罪なのだろう。私はやっぱり地獄に行くのだ。だったらこの本のガイドは必要である。ぜひとも予習しておきたい。
ところが、5,000円!?
初版ではあるけれど……。
セロハン包装してあるので中身が確認できない。
大したこと書いてないかもしれないと悩むものの、他の客に取られるのは本意じゃない。
とりあえず、微妙に本と本の間に隠して他の棚をウロウロウロウロ。
結局、買わずに古本市を去ってしまった。京都丸善にも行けなかった。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
そこから先の京都旅行は、体調を崩して眠れない夜を過ごしたり、雨に降られたりでさんざんだった。
旅行中に丸善に行く元気も時間もなく、帰りに古本市に寄る余裕もなく、『地獄大図鑑』を手に入れずに東京へと戻ったのである。
あとからネットで調べると、復刻本で4,675円だった。
ああ、初版で5,000円は超超お買い得だったのか。
なんでその場で調べなかったか、自分のアホさ加減が憎らしい。