砂丘、そして海のあるところ。
仕事柄ほんとうに出張の多い毎日を送っているのだけど、2023年の出張初めはそう、ここ鳥取。
前回訪れたのは二十数年前…
まだ6歳か7歳か、小さな子どもだった頃。
家族四人、新潟から車ではるばる父の実家のある広島へ向かう途中、鳥取砂丘に立ち寄った。
といっても、わたしが分かっているのは立ち寄ったらしい、ということだけ。
ほぼ記憶はないのだけど、なんとなく。頭の片隅で、どこまでも続くように見えた砂の丘を憶えている。
鳥取で過ごした過ごした三泊四日は、全日あいにくの雨模様。
西の方といえども、冬に雨や雪の多い気候は故郷の新潟となんだか似ていて、ほっとするような懐かしいようなふしぎな気持ち。
廃校をリノベーションしたコワーキングスペースや砂丘の目の前で仕事をしたり、週末は同僚と鳥取砂丘へ。
旬の松葉ガニを市場であれこれ悩みながら購入してみんなで分け合って食べたり、民藝品のお店ですてきなうつわを購入したり。
なかでもやっぱり一番記憶に残っているのは、二十数年ぶりに訪れた鳥取砂丘。
階段を登り切るとそこには、その名前の通り、一面の砂の丘が広がっていた。
まだ足跡のついていない砂の丘を一歩一歩、のぼっていく。
砂に足を取られながら、手をついて、みな一心不乱にのぼっていく。
はあはあと肩で息をしながら登り切ると、目の前にはまだまだ砂の丘が続いていた。
その向こうには、荒波の立つ日本海とブルーグレーの空。
あまりに広大な景色を目の前にすると、ずっと出張続きで忙しない日々が続いていることとか、
不安な仕事が急にたくさん降りかかってきたこととか、
心を支配していたあれやこれやの心配事が、一瞬だけすべて消えてしまったかのように思えた。
圧倒的な自然のある地に惹かれてしまうのは、このなんともいえない解放感を、常に心のどこかで求めてしまっているからなのだろうか。
鳥取は、なんだか"ちょうどいい"ところだ。
人がそれほど多くなくて、観光スポットに溢れているわけでもなく(もちろんいい意味で)
食べものが美味しく、街と自然の距離感が近い。
シャイなひとが多い、と聞くが、通えば通うほどすきになってしまう、スルメのような場所なのかも。
わたしたちを乗せた飛行機は羽田へ。
また近いうちに、と心の中でそっとつぶやく。