赤い電車は、品川から僕らを乗せてひとっとび。
七月某日。
その日、東京では明け方までしとしとと雨が降っていた。
朝起きて、雨雲レーダーを10分おきに眺める。
三浦半島にかかっている雨雲は、正午までには東京湾へ抜けていきそうだ。
私たちは、みさきまぐろきっぷを買って、品川から、赤い電車に乗り込んだ。
ファソラシドレミファソー。
くるりの「赤い電車」のメロディーが頭の中で流れている。
電車は、線路沿いの家々のすぐそばを走ってゆく。
人びとの暮らすまちの真ん中を駆け抜ける、京急線が好きだ。
三崎口駅に到着。
電車の中からは真っ黒な雨雲が見えていて、時折強い雨が窓に打ち付けていたが、駅に着いてバスに乗り換える頃には、夏のまぶしい太陽が再び顔を出していた。
三崎港に着いて、まずは遅めの昼ごはんで腹ごしらえ。
名物の鮪はもちろん、雲丹やいくらなど新鮮な海鮮がたっぷり乗った丼をいただく。
ご飯の後は、三崎港近くの街をぷらぷらと歩く。
ちょうどお祭りをやっていたのか、道にはたくさんの屋台が立ち並んでいて、小学生くらいの子どもたちが笑い声を響かせながら駆けてゆく。
そのそばを、サンダルにTシャツ姿のママチャリに乗ったお兄さんが通り過ぎてゆく。
「子どもが元気な街は、いい街だね。」
恋人の言葉に、なんだかすごく納得して、深く頷く。
三崎では路地裏のあちこちで家族や親族たちが集まって、思い思いにビールを飲んだりご飯を食べたり。
すぐそこで、人びとの普通の暮らしが当たり前のように営まれていて、なんだか安心する場所だ。
そして、センスの良いクリエイターさんたちが営むお店、カフェも多い。
「活気がある。」そんな簡単な言葉で言い表していいのか分からないけれど、港のある街ってやっぱりいいよな。
路地裏からは、港と、海が見えた。
空にはトンビが舞い、海風が強く、吹いている。
午後四時の三崎口駅は、光と影のコントラストが本当に見惚れるほどきれい。
夕方、三浦海岸駅で、喫茶店に立ち寄る。
クリームソーダとカフェオレ、あとはいちじくの入ったケーキをいただいた。
ケーキを食べ終わり、夕暮れ時の三浦海岸へ歩いて向かう。
昼間の暑さはどこへやら、涼しい海風が吹いていて、空はほんのりとピンク色。
砂浜に座り込むひと、水際で足まで浸かっているひと、椅子を並べて水平線を眺めているひと。
皆、それぞれの夕方を過ごしていて。
「こういう夏を、待っていたんだよなあ。」としんみりおもう。
帰りの駅のホームからは、はるか遠くに入道雲が見えた。
雲の左側半分に夕日が当たって、そこだけが昼間の残り香のよう。
日帰り、赤い電車で品川からひとっとび。
三崎は、人びとの暮らしがすぐそばにある、温かくて居心地の良い港街でした。
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