ニューシネマパラダイス ディレクターズカット版
昨日はじめてニューシネマパラダイスのディレクターズカット版を見て、映画としては通常版のほうがわかりやすいのかもしれないけど、自分としてはディレクターズカット版のほうが断然好きだなと思いました。
もともと通常版は2回くらい見たことあって、最近よく聞いているコテンラジオの深井さんがやっているポッドキャスト超相対性理論でニューシネマパラダイスの考察をやっていて、そういえばDC版見てみたいなと思って借りてみました。通常版120分に対してディレクターズカット版は171分。正直DC版みて、2回みたはずなのにみたことないシーンが多くてとても楽しめました。
個人的には通常版を見てからDC版がオススメな気がします。特典映像として楽しめます。ポッドキャストの考察で深井さんが「なんだかよくわかんないけどめっちゃ感動する」といっていて、本当にそれがすべてだなと思うのですが、よくも悪くも通常版ってカットされすぎててよくわからない、というのが印象です。特に中年になってからのトト。通常版だと若者の頃とは変わってしまった成功しているけど寂しい大人、という印象はあるけど、正直カットが少なすぎてどんなキャラなのかよくわからないままラストを迎えるという印象でした。 でもDC版では中年になってからのトトのシーンが結構多くて、え、わりといい人じゃんみたいな印象でした。
通常版だと30年ぶりに帰ってきてからの家族との会話もあんまりなかったのが、DC版だと気さくに話してて、家族仲もめっちゃよくて、わりとDC版だと少年時代から青年時代からのトトがそのまま大人になったって印象になりました。
正直通常版だと各登場人物の描写が少なすぎて関係性とかその人がよく見えなかったところが多いですね。アルフレッドとの友情もそうで、DC版だと青年期になってからもアルフレッドと話すシーンが結構あって、年の離れた友情というのがよくわかるけど、通常盤だと正直小さいときに仲よかったおじさんくらいの印象しか残らない。
ただ逆にDC版は通常版と比べてラスト感動できない、ここだけは否定できない気がする。通常版ってよくもわるくもアルフレッドとの関係性がうすいから、ラストサプライズで大昔の約束覚えててくれたんだ!感動!みたいなところあるんですが、DC版だといや、そのくらいしてくれるくらいには仲いいっしょ、みたいなところあってサプライズ感が落ちる。
お母さんの会話描写が多かったのもよかったですね。お母さんはお父さんを亡くして、それでもお父さんを思い続けて、ずっと独身でいたところが、トトがエレナと別れてからずっとエレナを思い続けて、
「仕事は成功した。大成功した。でもずっと何かが欠けていた。」というちょっと悲しい状態になっていて、お母さんがあなたのそういうところは私ゆずりねって言っているシーンがあってとてもよい。
正直DC版はある程度年齢がいってから見るとよい作品。通常版は大衆ウケするわかりやすい映画という感じ。DC版が蛇足と言われて評判悪い&モヤモヤすると言われるゆえんはだいたい「アルフレッドしれっと暗躍して2人を別れさせたんかーい。やりすぎ」と「トトとエレナ再会して不倫しとるやんけ」って2点が大きいかなと。
たしかにモヤモヤする要素と言われるとそうかもしれないけれど、このアルフレッドの暗躍があるからこそ、アルフレッドのトトへの
「自分のしたことを愛せ。子供の頃、映写室を愛したように。」という友情の深さが伝わると思うし、トトがエレナに再会したからこそ、ずっとエレナが好きだったことが伝わると思います。
よく通常版は友情の物語、DC版は恋愛の物語と言われますが、この恋愛パートがないとこの映画の本筋は語れないのかなと思う。
この物語は「映画で大成功したけど、どこかずっと欠けた人生」だったトトがその欠けたものを取り戻していくストーリーだと思うんですね。
ところどころその辺描写うまくて30年ぶりに帰ってきてお母さんが編んでいる毛糸がほつれていく描写にあるように、編まれてしまった糸をほどいていくストーリー。もちろん取り戻せるわけでもないし、取り戻せるのがいいわけじゃない。
通常版ではカットされてしまったこの”エレナとの恋愛”こそが欠けていたものであり、それを取り戻していくストーリーなのに恋愛けずってるからその主題が見えなくなってる気がします。もちろんノスタルジーに浸れる昔のみんなで笑い合っていた映画館の雰囲気もとても好きですし、テレビができて移り変わっていく様子も描かれていますが、トトは別にそれを寂しがっているわけでも、アルフレッドと会わない約束してたけど、亡くなる前に会えばよかったとかって話でもないかなと。
DC版では村に帰ってきたところでエレナの娘と偶然遭遇するんですね。そして車で追っかけて家判明させちゃうと。これたしかにストーカー感あるっちゃありますが、成功して冷たい人!みたいなイメージだった中年トト人間味あるとこあるじゃんってちょっと思いました。エレナも「もう昔のこと。会わないほうがいい」とかわりとちゃんと現実感保っているのもいい感じ。
で、これ娘役がエレナの青年期の配役と同じなので、まあ青年期のエレナそのものなんですね。2人は再会しますが、エレナはもう年をとったから見ないで、と車の中で明かりをつけたトトに明かりを消すように促すと。でもそこでトトは会って最初に一言「変わらずきれいだ」って言うんですね。
なんかもう昔好きだったエレナと同じ見た目の娘追いかけ出すともう最低感いなめないですが、30年たったエレナみて、エレナきれいだって言ってたらもうちょっと映画なので、純愛としてギリOKって感じが個人的にはしました。
個人的には旦那ボッチャなんかーい!!っていうところですね。そしてボッチャめっちゃアホキャラだったのに政治家として大成してると。え、これはあれですか、政治家はアホなほうが大成できるって話ですかってツッコミと、そういえば最初のシーンでも2人でエレナ追いかけてる恋のライバルだったみたいなシーンにつながってくるのかなと。
いやーでもエレナが誰かと結婚しているにしてもボッチャに取られるのはいややわー。まだ銀行員の政略結婚のほうが理解できるわーって心情になりそうだなって思いました。
そしてエレナから2人のすれ違いが実は、アルフレッドの仕業だったとわかったとき、けっこういろいろ考察見ると、「トトは真実を知ってアルフレッドを恨んだ」みたいな記述あってそれでまたモヤモヤするって話よく見かけるんですが、正直見てる限り恨んでるように見えないんですね。
「アルフレッドはキミにも魔法をかけたのか」
っていうんですよね。これは恨んでたら出てこないセリフなはず。
エレナも「2人でいることを選んだらトトは映画監督になれていなかった」って言ってますし、今考えたらアルフレッドの2人を別れさせる動きって本当に2人のことを思っての行動だって今ならわかるみたいな感じなんですよね。
もともと2人は映画館で待ち合わせて、選択肢としては2人で一緒にいるには駆け落ちするしかない、みたいな感じだったんですよね。でまあ映画だったらそれでいいけど、現実はその後も続いていくわけで。「大恋愛の炎もいずれは灰になる。」とさとしているアルフレッドのセリフが恋愛の話と映画のフィルムが燃えて火事になった話をかけて言っていて、とてもいい。
映画監督になれなくても、2人でいれたらそっちのほうが幸せなんじゃないか、とか2人一緒になれてないからハッピーエンドじゃない、とかいう見方もありますが、結局すべてうまくはいかないし、なにがよかったのかなんて言えないなと。
そして、トトはその失われたエレナとの関係を30年ぶりに戻ってきて、取り戻していく、その象徴がラストのキスシーンのフィルムであり、やっぱり友情よりも恋愛要素つよくなりますね。
個人的にDC版で気になるラストは2人再会してそのあとエレナに電話した時エレナが「あれは夢。あれ以上のハッピーエンドはないわ」ってまあわりと現実的なラインを保った発言してるなか「僕はそうは思わない」って終わっててちょい不倫続けたいんかーいみたいなところは気になりますね。
やっぱりあらためて通常版とDC版で映画の深さが断然違うので、ディレクターズカット版見てない方はぜひ見てみることをオススメしますね。