『本好きの下剋上』に見るあるべき図書館の姿
半年余り前に出会った小説『本好きの下剋上』。
初めのうちは文体に馴染めなかったり
人物の描き方に物足りなさを感じたりしつつも
まあ、還暦過ぎたおばさん(おばあさん⁉)向けに書かれたわけじゃないしね、読めるところまで読もうと思っていました。
ところが!
思いがけず(?)印刷の歴史や書物の流通の話が展開したり
物語世界がどんどん広がりを見せるに連れて
どんどんどんどん引き込まれ
気がつけば書籍版はすぐに読み終えてしまい
続きはweb版で完結まで読み
外伝はもちろん
ファンの方々による2次創作なるものまで色々読んでいる始末(^-^;
この本の魅力は
おそらく多くの方が語ってくださると思うし
分析するのもおこがましい。
ただ読んでいて、
ここで語られる図書館の姿に
現状の歯痒さを重ねてしまったので
そのことを書きたいな、
と思った次第。
そもそもこの本を読もうと思ったのは
サブタイトルである「司書になるためには手段を選んではいられません」という言葉を見たからです。
図書館がテーマの物語はたくさんあるし
図書館が道具立てのひとつになっている話はもっと多い。
でもなりふり構わずに司書になろうとするとはどういう話?
と思ったわけです。
それなのに描かれるのは
図書館はおろか本も本屋も見当たらない世界(o_o)
そもそも文字は存在するのか‼️
やがてそこは中世ヨーロッパを彷彿とさせる異世界で識字率は低く
本といえば羊皮紙に書かれ、重厚な革表紙がついた貴重なものばかり
ということがわかってきます。
と、こんな調子で書いていくと果てしもなくなりそうなので
端折ってしまえば、
ここで主人公は奮起して
なんと紙作りから始めてしまう❣️
そして最終的には研究施設をいくつも兼ね備えた図書館都市を作ってしまうという壮大な物語なのです٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
厳然たる身分差やら
江戸時代並みの識字率やら
まだまだ発展途上の世界ゆえ
主人公の目指す「無料の原則」の実現には程遠く
分類法も確立しておらず
司書の養成はおろか
そもそも蔵書数が圧倒的に少ない。
それでも、多くの人たちに忘れ去られているとはいえ
この世界に於いて図書館は
文字通り国の礎を擁する
国の要なのです。
政を行う者は
図書館に記録され保存されている膨大な知識を学び、歴史に学ぶ必要がある
という事実が明らかにされます。
司書は単なる事務員ではなく
知識の番人として
利用者の秘密を守り
その業務に一生を捧げる覚悟を持っているのです。
ここで思い出すのが「図書館の自由に関する宣言」
有川浩さんが『図書館戦争』を書くキッカケになったという宣言です。
『図書館戦争』の中では法律という位置付けになっていますが、
実際には法律ではなく
言わば図書館員の矜持を示すものと言えるでしょうか。
図書館の指定管理や委託が進む中
この矜持を保てるかどうか、は
大いに懸念されるところです。
直営だったとしても
全国的に司書としての勉強と経験を積んでいる職員が少なくなる昨今
私たち利用者の自由や権利は守られるのでしょうか。
『本好き…』の世界では
知識の番人たる司書たちは
時の王族に忠誠を誓うことが出来なかった為に処刑され
多くの重大な知識と資料が失われ
世界の崩壊の危機を招きます。
勿論、物語の世界です。
でも、過去に学ぶことを忘れたなら
人類は同じ愚を繰り返し
さらに取り返しのつかない事態を招くでしょう。
過去の知識を蓄積し
自由に学ぶことのできるのが図書館です。
そしてそれらを適切に収集、整理、提供するのが司書です。
付け焼き刃でできる仕事ではありません。
単純に読書が好きなだけでは
司書は務まりません。
だから司書の養成が急務なのです。
ベテランの司書が現役のうちに。
そして私たち「図書館とともだち・鎌倉」は、
市に対して新規に司書職員の正規採用を求めて要望を繰り返しています。
今は署名活動を展開し
多くの方にご賛同いただくことができました。
先日の陳情は不採択に終わりましたが
本会議での採決に向けて努力しているところです。
『本好き…』では主人公は力を得て
トップダウンで成し遂げるわけですが
私たち庶民は地道に活動するしかありません(・_・;
デューイやランガナタンの名前を見て
ニヤニヤしながら読了した『本好き…』ですが
図書館の充実は市民の幸福
ということをローゼマインさんは言いたかったに違いない!
その為には何と言っても有能な司書が必要です‼️
好き勝手に書いてきましたが
もしも応援してやろう
とお思いの方は、電子署名もやっております。
ご協力いただけましたら幸いです♬
#本好きの下剋上
#図書館
#図書館の自由に関する宣言
#司書
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