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Kindle出版の収入を増やすためにページ数を水増しするのか。
2024年8月にKindle作家デビューを果たし、そろそろ半年です。収益は雀の涙ですが、今年に入ってからようやく月1万円を超えてきました。
もっと収益を増やすには?
その方法を検討してみました。
Kindle収入の基本
KDPというKindleで専売を約束する条件で収入を整理します。
Kindle収入の柱は3つ。電子書籍、紙書籍、Kindle Unlimitedです。
電子書籍の印税(ロイヤリティ)
電子書籍版の印税の計算式は次のとおりです。
(電子書籍の販売価格 - 消費税 - 配信コスト)× 70%
780円で販売している拙著『論文書け!って言われても… 若手医師のための医学英語論文の書き方』を例に考えます。税抜き価格は709円です。配信コストは数円なので、税抜き価格の約70%に相当する500円弱が1冊あたりの私の収入です。
紙書籍(ペーパーバック)のロイヤリティ
これに対して、ペーパーバックの印税の計算式は次のとおりです。
(希望小売り価格 × 60%)- 印刷コスト
電子書籍の価格設定は内税ですが、ペーパーバック版は外税です。希望小売り価格を設定すると、そこに消費税が加算されて、最終的な販売価格になります。
ロイヤリティの割合は60%に設定されており、見た目の印象としては決して悪くない割合です。しかし上記のとおり、小売価格を先に60%に減額したのちに、印刷コストが差し引かれるのです。
前掲の拙著はペーパーバック版を1,300円で販売しています。税抜き価格だと1,182円。その60%は709円です。ここから印刷コストが差し引かれます。印刷費は白黒でも500円近くかかります。ですから、私の手元に残るロイヤリティは200円ちょっと。
当然、ページ数が増えたり、カラー印刷にするとさらに印刷コストがあがります。
販売価格の割に、紙版のロイヤリティは電子版の半分以下です。
電子版と同じだけのロイヤリティを得ようとした場合、ペーパーバック版の価格は税込1,772円に設定しなければなりません。
133ページの本が1,772円って高すぎません?電子版なら780円なのに、2.27倍の値段です。
(1,300円でも高いのは高いのですが…)
こう考えると、ペーパーバック版の値段設定って本当に難しいです。
私は現状では次の計算式で価格を決めています。
税込販売価格 ≒ (電子書籍版価格 + 印刷コスト)× 消費税
これなら妥当な気がしていますが、収益はイマイチ。今もたまに悩みます。
Kindle Unlimited
Kindle Unlimited経由で読まれた本は、1ページあたり約0.5円の収入を生みます。このページ単価は月によって多少の増減があるようです。
私の論文の書き方本は、135ページです。本を1冊読まれると67円くらいの収益が入ります。
当然ページ数を増やせば、収益が増えます。
そのため、次の疑問が浮かんでくるのです。
収益増加のために、ページ数を水増しするのか?
1行文章を書くごとに2-3行の改行を挿入して次の文章を書く。
Kindle本において比較的目にする構成ではないでしょうか。
「見やすくする、読者の負担を軽減する」といった名目で、大量の改行を挿入し、見た目がスカスカの本(以下、スカスカ本とします)の作成を推奨するKindle出版のノウハウ本を、しばしば目にします。
個人的には、スカスカ本は内容もスカスカでは?とか、Kindle Unlimitedの収益増加を狙った、ページの水増しに他ならないのでは?などと邪推してしまうのです。
とは言っても、同じ内容で収益が上がるなら、改行を多くしてページ数を増やしたくなるのもよくわかります。
実際に私の本も、通常の本より改行が多めなのは否めません。Kindle Unlimitedの収益はページ数に依存することを事前に知っていましたから、ページ数を稼ぎたかった意図は否定しません。
では、もし私の本でページをさらに水増しして収益増加を狙ったらどうなるか、試算してみます。
ページ水増しによる効果
現状の収益比率
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私の収益の柱は電子書籍です。収益の68%を電子書籍の売り上げが占めます。これに対してペーパーバック版(紙)は19%、Kindle Unlimited (KU)での収入は13%に留まります。
電子版のページを2倍に水増しした場合の比率
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次に改行を増やしてスペースを大きく増やし、ページ数を2倍に水増ししたケースを考えます。それによりKindle Unlimitedの収入だけ倍増します。この場合、収入の比率は電子書籍 61%, 紙 17%, KU 22%です。
結論:たぶん私はページを水増しする必要がない
そもそも私のKindle収入は、販売が支えていました。Kindle Unlimitedの収入の割合は少ないので、ページ水増しによるメリットは限定的です。
むしろ、スカスカ本を作ったとしたら、「スカスカ本はちょっと…」などと私のように敬遠する人もいるかもしれません。また、それなりに専門的な内容を書いているつもりなので、本らしい体裁をある程度は保ちたいと考えています。
本を出版する前はKindke Unlimitedが収入の柱になるとばかり思っていました。でも実際には、わざわざ購入して読んでくださる方がたくさんいるんですね。本当にありがたい限りです。
となると、私の場合は、敢えてスカスカ本を作る必要性はなさそうです。
ちなみに電子版と紙版の注文数の比率はこんな感じです。
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電子書籍60%, 紙版40%です。価格の高い紙版は売れないかと思いきや、意外にも紙版も結構購入されます。紙版も一定の需要があるんですね。もしかしたら、紙版のほうが研究費等のお金を使いやすいのかもしれません。
ということは、利益率の悪いペーパー版の価格を高くすれば、もっと収入があがりますよね。でも、元からペーパーバック版は割高だと思っているのでこれ以上の値上げは現状は考慮していません。
従って結論としては、何もする必要がない!笑
さて、先日講演をさせてもらって思いました。本の売り上げよりも講演料のほうがはるかに高額なんですよね。
となると、収入を優先するならば、本の価格どうこうよりも、講演にお呼ばれされるような本を書いて出版するほうが合理的です。
まぁそれも簡単ではないわけですが…。
いや、まぁ、そもそもですね、私には大切な本業があります。Kindle出版は趣味の一環として楽しく付き合えたら私は十分です!
そしてすでに楽しめています。Kindle出版の売り上げレポートを更新したときに、数円でも売り上げが増えるのを見るのは、実はかなり面白いのです。
Kindle出版はいい趣味だなぁと実感しています。
おわりに
なんだかんだと言ってきましたが、結局は自分の好きなようにやったらいいんじゃないかなと。もちろんスカスカ本を批判する意図も全くございません。
(スカスカ本の呼称が気に障る方がいらしたら申し訳ございません。適切な呼称があればご教示ください。修正致します。)
誰にも強制されず、好きなように書いていいのがKindle出版の何よりの強みだからです。
まだまだ私は楽しめているので、適度に続けてみたいなーと思います。