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【無駄の効用】 感想: 『医者と患者のコミュニケーション論』 里見 清一

まとめ

私にとって、この本での重要な部分を簡単にまとめると
医者の重要な仕事は患者とのコミュニケーション。
とはいえ画一的な正解はない。
ということです。

本を読んだ動機

 医師と患者のコミュニケーションはとても重要です。なぜなら医療は不確かだから。私も気をつけているつもりですが、どうしたらいいのか、そのコミュニケーション方法を学ぶ機会はそれほど多くありません。

感想

 著者の専門は呼吸器内科で、その中でも悪性腫瘍です。いわゆる、がん、ですね。私が従事する放射線治療科も、対象となる病気はがんですから、著者の背景と重なる部分もあります。

 本書では、

時代と関係なく、医者の最も大事な仕事の一つは、患者とのコミュニケーションである。

医者と患者のコミュニケーション論

と述べられています。これは、「患者医者関係は、ポテンシャルとしては敵対関係にある」ことが背景にあるようです。私もなんとなく気づいていたので、最近のテーマは敵対関係でなく、病気と共に戦う共闘関係でありたいなと思っています。

 そのためにコミュニケーションが重要で、本書でも理論は述べられてはいますが、より実践的な方法としては、まずは手本となる先輩を見つけて真似ることだと指摘しています。
 そういえば私も研修医として、放射線治療の初診をはじめて担当したときには、それまで見ていた上級医の話し方を完コピした記憶があります。そこから徐々にアレンジして今の診療スタイルになってきたと思います。

 そして重要なのは「無駄の効用」だと述べています。たとえば患者に触れること、手をにぎること、時には患者に抱きついたりすることもあるそうです(!)。病棟に回診にいったときは座って話すとか、贈り物をもらったらその場で食べろ、とかが具体例として挙げられていました。
 今の医療は必要な話を患者から聞いて、あとは電子カルテで検査結果を眺めていれば診療は成り立ちます。語弊があるかもしれませんが、患者に直接触れて診察する必要性は乏しくなっています。オンライン診療なんてその最たる例ですよね。
 ですが、コミュニケーションは言語だけで完結するものではないはず。患者に触れるとか、ただ座って話すことなどは、治療するには確かに必要ないことかもしれませんが、患者とのよりよい関係を築くためには必要なことなのかもしれません。それこそが「無駄の効用」なんだと思いました。


 さて、本筋とはやや離れた話として、校閲についての話題がありました。著者は「校閲と編集あっての言論」だと述べています。校閲がなくなったら、

言論はフィルタリング機能を喪失し、正誤不明の「便所の落書き」ばかりがこの世に溢れる

医者と患者のコミュニケーション論

と著者は危惧していました。
 いやぁ、これはその通りじゃないかと思います。
 Kindle出版は手軽で確かに良いのです。しかし、Kindle出版の最大の問題点は、第三者の目が一切入らなくても、「本」という形で世の中に出せてしまうことです。ですから真偽が定かではない情報がたくさんある。でも「本」の形を一応している。
 私もKindle出版で本を出せて、良い経験をさせてもらっています。でも、この質の担保こそがKindle出版の最大の課題だと思っています。これは自分の本を含めてです。なので、出版の前には少なくとも妻には一度読んでもらうことにして、妻のOKだけはもらってから出すことにしています。

おわりに

 医者対患者のコミュニケーションは、特殊な面がたくさんありそうです。もう少し勉強してみたいです。

 

基本情報

リンク:医者と患者のコミュニケーション論
入手場所:図書館
読み始めた日:2024年11月27日
備考:読書ノート14冊目


読んで頂き誠にありがとうございました。

髙草木

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