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【インクルーシブ・リーダー】インクルーシブな上司と部下の関係性が、多様なメンバーの離職率を下げる!?

今回は、上司と部下の良好な関係性が、多様なグループメンバーの離職率低減に有効、という論文を紹介します。

この論文の著者はコーネル大学のNishii教授という、インクルーシブ風土という指標を開発した、IL関連で名の知れた方です。

Nishii, L. H., & Mayer, D. M. (2009). Do inclusive leaders help to reduce turnover in diverse groups? The moderating role of leader–member exchange in the diversity to turnover relationship. Journal of Applied Psychology, 94(6), 1412.

どんな論文?

職場の多様性が離職率に与える影響は、リーダーとフォロワーの関係性(LMX)によって変わるのか、という研究です。

LMX(Leader-Member Exchange)は、リーダーシップの中でも交換理論(Transactional Leadership Theory)に分類される有名な概念です。この論文では、リーダーシップを「リーダーとフォロワーの双方向による関係性によって現れる影響関係」としており、Hollandarの説くインクルーシブ・リーダーシップの考え方に依拠しています(Hollandarのリーダーシップ論は、以前の投稿をご参照ください)。

人口統計学的な属性(人種、年齢、性別)や在職期間が多様であればあるほど、離職率は高まると、過去のいくつかの研究で言及されているようです。多様性が増すと、特にマイノリティは負の感情を抱きやすくなり、結果として離職に繋がるとのこと。

そんな多様な職場において、離職を減らす要素があれば・・・ということで着目されたのが、上司と部下の関係性、LMXです。

調査の結果、LMXが、多様な属性・在職期間のメンバーにおける離職率低減にインパクトをもたらすことがわかりました。
さらに、LMXのパターン、つまりリーダーとフォロワーの関係によっても、多様性が離職率につながる関連性が異なることもわかりました。
それは以下の2パターンでした。

  • LMXが高いとき。つまりリーダーとフォロワーの関係性が良好な時

  • LMX分化が少ないとき。LMX分化とは、あるフォロワーとは良好だが、違うフォロワーとは良くない関係性、という差の度合いで、LMX分化が少ないということは、まんべんなくどのフォロワーとも関係性がよいことを示す。

ちなみに、LMXについては、立教大学大学院のLDC同期の書いたこちらが分かりやすいと思うのでお勧めです!


感じたこと


この論文では、Hollander(2009)のインクルーシブ・リーダーシップ、上司と部下の良好な関係性の影響がたびたび参照され、インクルーシブな上司のかかわり方の有効性が説明されます。

上司がインクルーシブなリーダーシップを発揮し、メンバーと良好な関係を気付くことが、多様な人的資本を活かすためには重要、ということを示した研究と言え、大変意義深いものだと感じます。

気を付けなくてはならないのは、この論文が米国で研究されたものであり、国による文化の違いも考慮に入れないといけない点です。
加えて、属性のような「表層のダイバーシティ」だけでなく、「深層のダイバーシティ」にまで踏み込む必要性も、論文中に今後の課題として説明されています。

労働力人口がますます減少し、外国人材の活躍をどれだけ支援できるかは、日本企業にとって大きなチャレンジです。

一方、元々の国民性(島国)、新卒一括採用、年功序列型人事制度といった日本型雇用の名残もあって、日本企業は多様性、異質な存在・マイノリティを受け入れることに慣れていないといった肌感覚を抱いています。

その中、上司がILを発揮することで、マイノリティが辞めずに済む可能性を、この論文は示唆しています。言い換えれば、ILは多様性を活かすためのリーダーシップ、と言えるでしょう。

ILは今後の日本の労働力不足を解決する、一つの有効な方法論となるかもしれません!

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