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【リーダーシップ】上司と部下の関係性は、西洋/東洋の文化によって影響を受ける?(Rockstuhl et al., 2013)

上司と部下の関係性によって生じるリーダーシップに関する文献をいろいろ見ています。今回は、文化の影響を調べた研究を紹介します。

Rockstuhl, T., Dulebohn, J. H., Ang, S., & Shore, L. M. (2012). Leader–member exchange (LMX) and culture: A meta-analysis of correlates of LMX across 23 countries. Journal of applied psychology, 97(6), 1097.


どんな論文?

この研究は、リーダーとメンバーの関係性(LMX)に関する研究において、国の文化がLMXとその相関関係にどのように影響を与えるかをメタ分析にもとづいて検討したものです。

(メタ分析とは、ざっくり言うと、複数の過去の先行研究を調べ、その研究で使われたデータや結果を参照しながら統合的に行われる分析を指します)

23カ国から集めた282の独立した研究サンプル(N=68,587)に基づいて分析が行われました。その結果、

LMXと組織市民行動、正義感、仕事満足度、離職意図、リーダー信頼の関係が水平的個人主義(例:西洋)の文脈でより強く、
垂直的集団主義(例:アジア)の文脈でより弱い

という結果が主に明らかになりました。

その結果、LMXと他の変数の間の関連性は複雑である、というのが本論文の結論です。(それはそうだよな、と思いつつも・・・複雑であることを統計的に示したことは価値!)

また、文化的な背景を考慮したリーダーシップの重要性が強調されています。特に、グローバルなリーダーは文化に応じた関係構築が必要であることを示唆しています。例えば、西洋文化では個別の関係が重要視される一方、アジア文化では集団利益や役割に基づく忠誠心が重視されるため、それぞれの文化に適応したリーダーシップが求められるとのこと。


国の文化はどう調査されたのか

この研究では、水平的個人主義と垂直的集団主義の文化的価値の構成を使用しています。これらの構成は、2つの文化的価値(個人主義–集団主義と権力距離)の組み合わせに基づいています。

  1. 個人主義–集団主義(独立的自己 vs. 相互依存的自己)

    • 個人主義: 個人の目標や態度が社会的行動の基盤となり、自己を他者から独立した存在として見る傾向

    • 集団主義: 集団の利益や義務を強調し、自己を他者と相互依存した存在として見る傾向

  2. 権力距離(人々の間の平等な地位 vs. 権威への尊敬を強調)

    • 低い権力距離: 人々が他者と平等な地位にあると考え、個人的な関係や好意が権威に対する反応に影響を与えやすい

    • 高い権力距離: 権威への尊敬を強調し、個人的な関係よりも役割に基づく義務が重視される

1と2を統合する形で、「水平的個人主義」と「垂直的集団主義」という表現が使われています。

水平的個人主義(西洋に多い) 
水平的個人主義文化に属する人々は、自己を他者から独立し、平等な地位にあると見なす傾向があり、西洋社会は、一般的にこの構成に該当し、個人的な目標や態度が社会的行動の基盤となる。

垂直的集団主義(東洋に多い)垂直的集団主義文化に属する人々は、自己を他者と相互依存した存在と見なし、権威への尊敬を強調するようで、アジア社会は、一般的にこの構成に該当し、集団の利益や義務を強調する。

この研究の結果、

  • 水平的個人主義文化では、リーダーとメンバーの交換(LMX)と成果変数要素との相関関係が強く、垂直的集団主義文化では弱い(成果変数:LMXと組織市民行動、正義感、仕事満足度、離職意図、リーダーへの信頼)

  • LMXと、タスクパフォーマンス、組織コミットメント、変革型リーダーシップの関係には文化的な違いは見られない

ということが示されたようです。

参考:23か国の内訳

一応、23か国の内訳も確認しておきます。西欧諸国が多い気がしますが、過去の先行研究が多い、ということなのだと理解しています。

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スイス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、日本、中国、韓国、台湾、シンガポール、インド

(ただ、集団的垂直文化に所属する国の割合が少ない気がします。また、実際は米国の研究が圧倒的に多いという状況なのですが、統計的な分析を行っているので、問題ないのだと想像します)


感じたこと

23か国で行われた282もの研究を分析して紡ぎ出す分析は、相当時間もかかるし統計的な知識も必要になるということでは、かなり価値のある研究ではないかと思います。

上司ー部下間の関係については、文化的な影響もさることながら、職場のもつ雰囲気や職種などの影響も同様に(それ以上に)あると思われるので、どのあたりに焦点を当てられた研究か、今後意識して論文を見てみようと思います。

(関連する投稿のリンクも貼り付けておきます)


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