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ビルバオの熱狂を日本でも再現したい
大学2年生になる前の春休み、慶應ソッカー部の20名強でスペイン遠征に参加させてもらった。行った先は、ビルバオとバルセロナ。
ビルバオでの滞在中、幸いにも2試合のホームゲーム(生観戦は1試合)に立ち会うことができ、日本では感じられないサッカーへの熱狂に触れることができた。
「アスレティック・ビルバオ」の偉大さを思い知る
アスレティック・ビルバオはスペインのバスク地方に本拠地を置く、ラ・リーガ(スペインリーグ1部)に所属するクラブだ。
このクラブの面白いところは、所属できる選手が「バスク人」だけということ。ここで言う「バスク人」の定義は、
① 親がバスク人
② 生まれがバスク地方
③ ユース年代でバスクのチームでのプレー経験がある
のうちいずれかを満たす選手を指している。
こんな制約があるにも関わらず、ラポルテ(現マンチェスター・シティ)やハビ・マルティネス(現バイエルン・ミュンヘン)、アンデル・エレーラ(現マンチェスター・ユナイテッド)、ジョレンテ(現ナポリ)など世界的選手を多数輩出している。
ビルバオへ行って先ず驚いたのが、街のあらゆるところにクラブの旗が掲げられていること。この街の人たちにとっては、アスレティック・ビルバオが誇りであり、象徴的な存在なのだ。
そして、クラブのユニフォームを着て街を歩いていると、車のクラクションを鳴らしながら「VAMO!! BILBAO!!」と言って窓から身を乗り出してこちらへ叫んでくる。
日本では体験したことのないことばかりで、全てが驚きだった。そして、サッカーに対して超熱狂的なこの街を、一瞬で好きになった。
尚、この写真はビルバオの練習見学に行き、たまたま現地のメディアに取材を受けた時のもの。この時も多くのサポーターが練習場へ詰めかけていた。
アスレティック・ビルバオ vs マンチェスター・ユナイテッド
ビルバオでの滞在中、UEFAヨーロッパリーグのベスト16(vsマンチェスター・ユナイテッド)が本拠地サンマメスで開催された。
この試合のチケットは持っていなかったが、現地の雰囲気を味わうためにチーム全員でスタジアムへ行くことに。
スタジアム周辺には予想通り、赤白のユニフォームを着たサポーターが大量にいて、お酒を飲みながら大合唱をしている。ヨーロッパの大会、しかも相手があのマンチェスター・ユナイテッドということもあり、物凄い雰囲気だった。
流石にマンUには勝てないだろうと考えていたが、なんと2-1でビルバオが勝利した。得点が入った瞬間の「ウォーーー!!!!!!」という歓声は、地響きのようで凄いものがあった。
結局アスレティック・ビルバオは、ホーム&アウェーの合計5-3でマンチェスター・ユナイテッドを下してベスト8へ進出。
この勢いで快進撃を続け、ベスト8ではシャルケ、ベスト4ではスポルティング・リスボンを下し、この年のファイナリストになった。
決勝では、同じラ・リーガのアトレティコ・マドリードに0-3敗れて準優勝となったが、サッカーをしている人であれば、ヨーロッパリーグ(EL)での準優勝がどれほど凄い成績か、理解してもらえるはずだ。
アスレティック・ビルバオ vs バレンシア
ELでマンチェスター・ユナイテッドに勝利した僅か数日後、ラ・リーガの観戦をするために、いよいよチケットを手にサンマメスへ。
相手は競合バレンシア。当時のバレンシアには、ジョルディ・アルバ(現バルセロナ)やソルダード(現グラナダ)がいた。
一方でビルバオには当時、ハビ・マルティネスとジョレンテが所属していたが、ジョレンテは残念なことに欠場(ハビ・マルティネスはセンターバックで出場)。
勿論、サンマメスも超満員で、もの凄い盛り上がり。
当時試合観戦をして一番面白いと感じたのは、ビルバオが攻撃をしてペナルティーエリア近くまで来ると、サポーターが期待をして一斉に立ち上がること。そして、シュートを外すなど惜しいシーンがあると、全員が揃えて「(ガンバ大阪がやっているような)ウーーー!!」という声を上げる。
僕たちも現地での観戦方法を学び、サポーターの行動を真似して盛り上がった。これも日本では体験したことがなかった為、新鮮でとても楽しかった。
試合はというと、ビルバオは疲れていたのか、明らかにバレンシアの方が強かった(正直、よくこれでマンUに勝ったなと感じた。ww)。とにかくソルダードがスーパーで、ハットトリックをしたことを記憶している。
日本でもビルバオのような街を作り上げたい
最近ではJリーグでも、球技専用のスタジアムが完成したり、イニエスタのようなスター選手が来たこともあり、毎年のように観客動員数が増えている。
勿論、国も異なれば文化も異なる為、ビルバオと日本の地方を横並びで比較することは難しい。しかし、まだまだJリーグにはポテンシャルがあるし、欧州諸国にこのような雰囲気作りができて、日本にできないはずはない。
その地域に住む全員がクラブを愛し、全員が目の前の1試合に一喜一憂する。Jリーグが世界一のリーグになる為には、「地方創生」という言葉だけでは甘く、そのクラブが地域の象徴となり、ビルバオのような街の雰囲気作りが必要だ。
コロナでリモート環境が続く中、「リアル」の価値はより大きくなった。サッカーは「リアル」のスタジアムで観戦するのが一番だし、そこは永遠に変わらないエンターテインメントだと信じている。
自分がいつかサッカーにビジネスサイドで携わった時には、サッカーを通じて地域を盛り上げ、誰もがサッカーを愛してくれるような、ビルバオのような街づくりをしたい。