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日比谷音楽祭とJ-POPの未来 【032/200】

週末シンガーソングライター・ヤマカワタカヒロです。

6/1.2に開催された日比谷音楽祭のクラウドファンディング出資者向け特別セミナー「J-POPの未来」に行ってきました。

講師はもちろん亀田誠治さんと、VIVA LA ROCKのプロデューサーでもある音楽ジャーナリストの鹿野淳さん。

日比谷音楽祭立ち上げの生々しいストーリーやJ-POPと洋楽、日本とグローバルの音楽シーンについての考察と今後の展望、そして、来年の日比谷音楽祭に向けての意欲など、来場者を巻き込んだ盛りだくさんのトークセッションでした。
(鹿野さんがタイムキープを意識しつつも、30分押しでもまだまだ語り尽くせない内容でした)

今回のセッションで自分的に刺さった内容のまとめと、今後の活動に向けて考えたことを残しておきます。

◆東京とニューヨークの違い
・東京は過密地域であり、また、大きな公園の近くでも住宅があり、音楽イベントを開催するハードルが非常に高い。
・ニューヨークではセントラルパークなどの公園の管理・維持や文化振興イベントを企画・運営しているシティ・パーク・ファンデーションというNPOが毎年多額の寄付を原資にフリーライブを各所で開催している。
・多民族・多文化共存が前提であるアメリカにとって、政治的な批判等も含めて、多様な表現を許容する風土がある。
・日比谷音楽祭は構想から実現まで3年かかった。高いハードルを越えるために、あらゆる関係機関との粘り強い対話が必要だった。信頼を得るために2年かかった。

日本を代表する音楽プロデューサーである亀田誠治さんをもってしても、東京で音楽のフリーイベントを企画・開催することは非常に難しく、何度も絶望的な状況を迎えたこと、それを粘り強く、想いを自分の言葉で伝え続けていったことで、だんだんと応援してくれる人たちが増えて、道が拓けた、という話は、音楽に限らず、あらゆるチャレンジをする人たちに勇気を与えてくれます。

また、亀田さんは、想いを伝えるということについて、こうも話していました。


・想いを誰かに代弁させちゃいけない。血の通ったコミュニケーションが大切。
・ひとりの人間が一貫して想いを発信していくこと。キュレーションもその手段として積極的にやっている。
・日比谷音楽祭もたくさんの方から出演希望をもらったが、出演者はすべて、今回のイベントに必要だと思う方を、自分で選んで声をかけさせてもらった。


想いを自分の言葉で一貫して発信すること。

目の前、もう手の伸ばせば届きそうな距離で、生の亀田さんが熱く語る姿を見て、言葉を聞いて、僕自身、震えるものがありました。

ライブ(生)って、やっぱりものすごいパワーがある。


その後も、来場者の事前アンケートに答える形で、熱いトークが進みました。

きれいにまとめられていませんが、ざっくり大まかなテーマごとにまとめると、以下のような内容が話されました。

◆音楽業界の収益構造の変化
・音楽業界の予算が縮小している。ライブで儲ければいい、と言うが、ライブできちんと収支を回せているのは一握りのトップアーティストだけ。だから若手アーティストへお金が回らない(投資できない)。
・音楽家の収入はもうCDや曲の売上ではなく、カラオケ印税や着メロ的なものや、なんといってもグッズ売上。レコード会社もグッズ印税を求めてくる時代。
・グッズを売るためにツアーをやる。コンサート企画・運営にかかる経費が上がっている。会場の鉄柵や、ステージセットのLED画面など、資材の取り合いになっている。
・ロックフェスの動員数は右肩上がりだが、協賛金は集まりにくくなっている。ロックフェスの顧客層は、一般層と違うと認識されている。
・日比谷音楽祭はこれまでのロックフェスとコンセプトが違う。音楽ジャンルも世代もあらゆるボーダーをなくし、フリーライブにこだわり、2日間で10万人規模の多様性に溢れた参加者を集めた。この10万人は、近い属性の集団と異なり、大きな広がりを生む可能性のある10万人。
・音楽業界のお金の流れを考えると、スポーツの世界でもやっているように、業界内だけではなく、外の世界からお金と応援を集めていく必要があると考えた。

◆音楽の聴かれ方とつくり方の変化
・日本はまだアナログやCDが買われているが、アメリカではもうサブスクリプションが75%になっている
・これまでのCDチャートは水曜リリースの「点」に向けての短期集中のプロモーションだったが、サブスクリプションはプロモーションの時間軸が長く、再生回数で見ていくものに変わった。
・みんなで同じ音楽を楽しむ時代から、個人で耳の中だけで自分の趣味にあったものを聴く時代になった。
・音楽は「そこにあったもの」から、奥まで掘らないと出会えないものになっている。多様化ではなく、単に細分化してしまっているところもある。
・アルバムの概念はなくなり、アレンジは足し算から引き算に変わっている。
・サブスクリプションのグローバルTOP50を毎日聴いていると、ほとんどの曲が似ている。歌はじまり、生楽器なし打ち込みのみ、3分前後で終わる、など。
・アメリカではシンガーソングライターのクレジットに10人以上のクリエイター名が並んでいる。非常に力のあるクリエイターたちが自分たちの得意技を持ちあって、一気に共作する。非常に合理的なアプローチで、クリエイターたちもとにかくポジティブに「いい曲」を意欲的にチームでつくり、かつ、コンペで選ばれる。質がものすごく高く、一方で同じようなサウンドの曲が溢れている。

◆J-POPの希望と限界、そして未来
・アメリカと日本ではミュージシャンの層の厚さが違う。それは「差」と見るか「違い」と見るか。
・海外の路上ライブはミュージシャンが腕を上げるため、日本の路上ライブは表現をしてチャンスを待つ場所、というような違いがある。
・日本はレストランでジャズのライブがあるとライブ目的の客のみで、食事目的の客が減る。ライブはちゃんと聴かなきゃと思う人が多いのかもしれない。
・J-POPは洋楽から取り入れつつ、独自の進化をして、J-POPならではのサウンド感が完成の時期に来ている。生楽器が比較的多く入っていて、湿度感があり、演奏の情緒を大事にしている。
・歌詞について、洋楽はrhymeが必須の制約として存在し、言葉単位での表現が強い。J-POPは一筆書き的で、奥行きや幅がある。
・J-POPは構成が複雑だったり、緻密なつくりが多く、アメリカには広がりにくい。最近ではアメリカに合わせようとせず日本語のまま出していくアーティストも出てきた。
・日本の若手ミュージシャンのレベルが高い。彼らに発表の場をもっとつくりたい。今はあらゆる世に出る作品がポストプロダクション(編集)されているので、下手なものが流通していない。そのレベルに合わせて若者が育っている。

◆来年の日比谷音楽祭に向けて
・今年は夜の公園を使えず、野音ライブに集約した。夜の公園を使うということは、照明等の光熱費や警備にかかる費用など、コストが格段に上がる。
・来年は、時間帯の拡大、場所の拡大ともにやりたい。昼の公園で子どもからお年寄りまで3世代にわたる層に来場してもらっているが、加えて、夜の時間を使うことで大人層やカップルなどに楽しんでもらいたい。公園内の今回活用しなかったエリア、日比谷ミッドタウン周辺のエリアも活用して、今年できなかったコンテンツや、呼べなかったアーティストの出演の場もつくりたい。金曜の夜から前夜祭的なものもやりたい。
・持続可能性の課題の話も出たが、日比谷音楽祭は来年だけじゃなく、ずっと続けていきたい。東京の観光パンフレットに「毎年開催されている日本を代表する音楽のフリーイベント」として紹介されたい。
・日比谷音楽祭のモデルは、ぜひ多くの人たちに真似してほしい。みんなと一緒に広げていきたい。


本当に、濃密で、刺激的なトークセッションでした。

※セミナー内容の記載については、当日のメモを元に僕の解釈も含めて再構成しています。実際の内容と著しく異なる部分がありましたらご指摘ください。



僕自身、応援してくれる仲間たちと一緒に野音でのライブを実現させたい、という夢を持って活動していますが、今回の話は、その活動のなかで感じることとも非常につながる内容でした。

亀田さんも鹿野さんも、メジャーの世界で活躍されていますし、その上で、ここまでの危機感を感じているわけですが、その下の世界はなおさら、です。

ライブをするのも、曲をつくるのも、音源をつくってリリースするのも、プロモーションするのも、お金と時間がかかります。

続けること自体が、本当に難しい。

僕のライブに来てくださるお客さんの中にも「昔、音楽やってたんですよね」という方が多いと感じます。

楽器を置き、音楽を聴く機会も減り、ライブに行く回数も減った人たち。

そんな人たちが、僕のライブを見てくださって、やっぱり音楽が好きだと思い出してくださるのは、本当に嬉しい。


僕のお客さんの多くが、普段はライブに行かない、という方たち。

僕のライブで始めてライブハウスに足を踏み入れた、という方も結構いらっしゃいます。

普通に生活をしていると、生の音楽に触れる機会がこんなにも少ないのかと感じる一方、普段、音楽を聴かない人でも、音楽とは違うつながりやきっかけでライブに触れることで、そこから音楽を好きになってくれるチャンスは本当にたくさんあるんだと思います。

そして、CDやサブスクリプションなどの音源で触れることに比べて、ライブで触れることの強さを、肌身で感じます。

だからこそ、日常生活の中に、ライブと触れるきっかけを増やしていきたいし、発表の場を増やしていきたい。

亀田さんは若手アーティストへの機会提供を非常に重視されていますが、もちろんそれは全肯定しつつ、僕は、これまでの環境で音楽に触れる機会が少なかった、また、音楽を続ける環境が整っていなかったことで、音楽から距離を置いている大人層に向けても、もう一度、音楽に触れる機会の拡大をしていきたいと考えています。

よいアーティストを育てるのは、よいリスナーです。

そして、よいリスナーは多ければ多いほどいい。

未曾有の人口減少が進むなか、社会の大勢を占めるのは今の大人層です。

今の大人層がもっと音楽に触れ、自分たちも音楽を楽しむようになれば、若手アーティストのよき理解者となり、支え、応援する側に回っていくんじゃないかと思います。大人たちが音楽をただ”うるさいもの”だと捉えてしまったら、若手アーティストたちを潰してしまうことになるでしょう。そうならないためにも、大人層と音楽の距離を縮めたい。

そんなことを考えた時に、アラフォーの僕がやるべきことって、きっと、同世代の大人層に対して、一緒に音楽に触れる機会をつくって、誘うことなんじゃないかなと、思いました。

亀田さんが「日比谷音楽祭を真似してほしい」と言っていましたが、11/4に開催を予定している「みんなの文化祭 in 調布」も、かなり近い志で企画しています。

地域の子育て支援につながる、みんなで創作・表現をすることを楽しむイベントを目指していますが、僕はそのなかで音楽部門のプロデュースを担当しています。

できるかぎり身近なところから、楽器に触ってみたり、生の音を聴いてもらったり、一緒に歌ったり、そういう「生」なもの、「手触りのある」ものを大事にしていきたいです。



もっと音楽を日常的なものに。

音楽だけじゃなく、表現する人、それを応援する人たちであふれた社会に。

日比谷音楽祭と一緒に、僕もがんばっていきたいと思います。


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ヤマカワタカヒロ
noteを読んでくださりありがとうございます。 歌を聴いてくださる皆様のおかげで、ヤマカワタカヒロは歌い続けることができています。 いつも本当にありがとうございます。