知りたくないではすまされない

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 江崎道朗著「知りたくないではすまされない ニュースの裏側を見抜くためにこれだけは学んでおきたいこと」を読みました。著者は安全保障・インテリジェンス・近代史の研究を専門とする評論家です。


 アメリカの歴史と世界戦略を中心に解説した本ですが、確かにタイトル通りの印象を受けました。安倍元首相とトランプ元大統領の関係は良好で、日米関係もいい感じに持って行ってくれていたように思っていましたが、アメリカ側はいざという時に日本を助けてくれるのかというと、大いに疑問だということでした。民主党政権時代の中国漁船衝突事件における船長の釈放、靖国神社参拝を見送る総理大臣、中曽根政権当時に「ともにソ連の脅威に立ち向かおう」とのアメリカの投げかけをいなしてしまったこと等等、日米は同盟関係ではあるものの、日本が本気で、死に物狂いで自国の領土を守るという姿勢を見せていないのに、アメリカが本気で守ってくれるはずはないということでした。この辺りのお話は大変説得力があり、また一般的な報道がいかに偏ったものなのかということもよくわかりました。


 アメリカと言えば、少し前まで世界の警察を自認し、他国の争いに首を突っ込んだり、民主化を促したりというイメージをもっておりましたが、保守勢力は「アメリカ・ファースト」という考え方で、とくに自国の安全保障と密接な関係がない外国での戦争に、アメリカはできるだけ関与するべきではないという初代大統領ワシントンが唱えた外交原則を大切にしているそうです。「アメリカ・ファースト」はトランプ大統領が言い出したのかと思っていましたが、1940年にルーズベルト政権が第二次世界大戦に介入することを真っ向から反対したのが、保守層の議員で構成されたアメリカファースト委員会で、トランプ元大統領が言っていた「アメリカ・ファースト」はこの不干渉主義の外交政策を引き継いだものだということでした。


 ルーズベルトについては、ヤルタ会談とポツダム宣言でそれに迎合する政策を推進し、東欧とアジア全体に渡る多くの国家と何百万人もの人々の自由を犠牲にしたという評価もあるそうです。日本ではあまり発売されていないが、ルーズベルトについて批判する本はたくさんあるともありました。ルーズベルトは民主党ですが、ブッシュ時代の共和党政権も湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争等がありましたが、こうした外交を推し進めたのはネオ・コンサバティブといわれる「世界中にアメリカ軍を派遣して民主主義というものを輸出すれば、世界は良くなる」という理念先行の方々だそうです。共和党のもともとの保守層は外交よりも、自国内の経済疲弊と、フェミニズムに代表される過激な運動の暴走、それらによる社会の解体をいかに食い止めるのかということに向けられており、外交政策はネオコンに引っ張られたとありました。


 当たり前なのですが、アメリカは二大政党制ですし、一枚岩でコレと決まったものがあるわけではありませんから、複雑な事情を抱えているということです。そのあたりの一端を勉強させて頂きました。この辺りの話は面白いので、まだまだ読んでいきたいと思います。

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