ロウソクの科学


 ファラデー著、三石巌訳「ロウソクの科学」を読みました。著者は私でも名前を存じ上げている化学者・物理学者ですが、本当に存じ上げているだけです。イギリスの方で電磁気学、電気化学分野での貢献で知られているそうですが、そういわれてもあまりピンときません。電気分解の法則の発見、ベンゼンの発見、電極やイオンといった用語を一般化させ、科学史上最も影響を及ぼした科学者の1人とされた方です。本書は、そんなファラデーがロンドンの王立研究所で催された連続六回の講義の記録です。

 講義の冒頭で、「この宇宙をまんべんなく支配するもろもろの法則のうちで、ロウソクが見せてくれる現象にかかわりをもたないものは一つもないといってよいくらいです。」とありました。残念ながら通読してみても、そうであるということまでは理解しきれませんでしたが、そういうつもりでロウソクに点された炎をみると、なんともロマンティックな気持ちになります。

 そもそもロウソクについてきちんと理解できておりませんでした。いや、真剣に考えたこともなかった。ロウソクの芯に火をつけると、その芯が燃えて、その熱でロウソクのロウが溶けるという理解しかなかったのですが、ロウソクが溶けるだけでは、溶けたロウは形を変えて残らなければなりません。しかし、芯が燃え尽きる頃にはロウもなくなってしまうのですからそんなことさえ気が付かないほど、ロウソクについて考えたことがありませんでした。大雑把な理解ですが、芯に火が付くとロウが溶けて、溶けたろうが芯に吸収され芯を上って行き、ロウが燃料になって芯の先端が燃え続けるということでした。細かいところまでは理解しきれておりませんが、そこから燃焼、水、酸素、水素、窒素、二酸化炭素と言ったところに話が細分化されていきます。

 水野電気分解や酸化についての実験も講義の中で行われたようですが、この部分は非常にわかりづらく、読み進めるのも苦労しました。いや、途中で完全に理解するのはあきらめました。挿絵もあるのですが、それでも理解は今一つでした。化学をきちんと勉強していた方は理解できるのかもしれません。それでもロウソク1本の燃焼からの壮大な世界観は伝わってきたように思います。

 解説にありましたが、ファラデーは貧しい家に生まれ、小学校中退で製本屋の小僧になったということです。小僧という言葉はなじみがありませんが、丁稚みたいなものでしょうね。しかし、仕事の合間に製本しかけた本を読み、与えられた屋根裏の部屋で実験をしていたそうです。そうしたことを見守ってくれた製本屋のご主人も打つ綿大きいですね。

 理解しきれていないのが残念ですが、ファラデーの凄さを垣間見ることができました。

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