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読書感想文『人間失格』

太宰治の『人間失格』は、自己否定と他者との疎外感に苦しむ主人公・大庭葉蔵の人生を描いた作品です。この本を読んで、私は人間の弱さや生きることの難しさを改めて考えさせられました。そして、仕事や人間関係で自分が感じた挫折や孤独と重なる部分も多く、深い共感を覚えました。

主人公の葉蔵は、生まれつき他人と上手く付き合えず、常に自分を「偽りの仮面」で包んでいます。彼は、人と本音で向き合うことができず、誰にも心を開けません。その結果、彼はどんどん孤立していき、自分の価値を見失っていきます。私は、この葉蔵の姿を通じて、人間関係の難しさを強く感じました。

仕事を始めたばかりの頃、私も葉蔵のように、周囲との関係に悩んでいた時期がありました。初めての職場では、自分をうまく表現できず、職場の人たちとどう接すればいいのかが分からず、常に緊張していました。ミスをしたときには、何度も自分を責め、やがて自分にはこの仕事が向いていないのではないかと、自己否定に陥ることもありました。そんな時、この本を読んで、葉蔵が抱える孤独感や自己否定が、自分の気持ちと重なり、彼の苦悩が痛いほど理解できました。

葉蔵が酒や女性に溺れていく様子も、彼が現実から逃げようとしていることの表れであり、共感する部分もあります。仕事やプライベートでのストレスがたまると、つい現実逃避したくなる気持ちは私にもよく分かるからです。しかし、彼が最終的に破滅していく姿を見て、逃げることで問題は解決しないことを再認識しました。現実から目を背けるのではなく、向き合って乗り越えるしかないのだと感じました。

また、葉蔵が「恥の多い生涯を送ってきました」と語る冒頭の言葉が、作品全体を通して深く心に残りました。彼は、自分の人生を振り返るたびに、後悔と恥の感情にさいなまれています。この感覚は、誰しも少なからず経験するものでしょう。私も、自分が過去に犯したミスや、うまくいかなかった人間関係に対して、時折後悔や恥ずかしさを感じることがあります。しかし、葉蔵とは異なり、私はその経験を成長の糧として捉えることができるようになりました。『人間失格』を通じて、過去をどう受け入れ、今後にどう活かしていくかが、人生を前向きに生きるために重要であると再確認しました。

この作品は、決して楽しい物語ではありませんが、現代社会に生きる私たちが抱える悩みや葛藤を浮き彫りにし、自己を見つめ直すきっかけを与えてくれるものです。葉蔵のように、自分の弱さに押しつぶされそうになることもあるかもしれませんが、その弱さと向き合い、どう生きていくのかを考えることが、人生において最も大切なことだと感じました。

私自身、今後もこの作品を折に触れて読み返し、自分の人生を振り返りながら、より良い生き方を模索していきたいと思います。

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