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あの日々の断片のごと降りしまく銀杏並木をゆく車椅子/六厩めれう

2022年11月15日(火)のうたの日13時部屋の「断」の短歌。

作中主体は「車椅子」に乗っている者とも取れるし、乗っていない者とも取れる。「車椅子」に乗っている者が作中主体である場合、自らの乗る「車椅子」をあえて客観的に見つめているように読める。「車椅子」に乗っていない者が作中主体である場合、「車椅子」に乗っている者のことを思っているように読める。

前者の読みにおいては、「降りしまく」中で舞う銀杏の落葉などは自身にとって思い出深い日々の「断片」のように見えたということになる。後者の読みにおいては、落葉などが「車椅子」に乗る人物の思い出の「断片」のように見えたということになる。「しまく」は、風が激しく吹きまくるという意味の動詞。

「銀杏並木をゆく車椅子」は、落葉や銀杏の殻や実をつぶしながら進み、音を立てているだろうか。小春日に懐古の情にひたる様子が見えてくる一首だ。

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