スマフォのみいじりたる手にひとひらの秋を知らする文が届きぬ/青井力
2022年11月3日(木)のうたの日21時部屋の題「題『文』を文語で」の短歌。
心温まる文語新仮名短歌。旧仮名(歴史的仮名遣い)なら「いぢり」だが、新仮名(現代仮名遣い)なら「いじり」でよい。「たる」は存続の助動詞で「ている」という意味。「する」は使役の助動詞で「せる」という意味。「ぬ」は完了の助動詞で「た」という意味。
第三句「ひとひらの」がおもしろい。構造を見れば「文」を修飾する語だとわかるが、一読したときには「秋」に掛かるようにも取れる。すると、「ひとひらの秋」という詩的な表現が浮かび上がる。「秋を知らする文」というのは、作中主体にとって恒例となっているものかもしれないし、思いがけず受け取った珍しいものかもしれない。秋の行事や会合への誘いなど、さまざまに想像できる。第二句までの情趣の感じられない景との対比で、第三句以降が際立っている。
文語に慣れていないと助詞「だけ」を使うところだが、作者は慣れているので「のみ」を用いている。その他、文法的にも瑕瑾がない。
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