巡礼路コンポステーラめいている老ダックスのゆく遊歩道/美好ゆか
※ 「巡礼路」のふりがなとして「サンティアゴ・デ・」とある。
2022年6月13日(月)のうたの日15時部屋の題「巡」の短歌。
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、スペイン北西部、ガリシア地方の宗教都市。この町への巡礼路は、スペイン国内ルートも、フランスからのルートも世界文化遺産に登録されている。
このキリスト教の巡礼の道のりを舞台にした作品の一つがフランス映画『サン・ジャックへの道』である。ひょんなことからともに旅するはめになった男女九人の心の交流を描くヒューマンドラマ。映画の舞台は、フランスからのルートで、険しい山道である。
この巡礼路をゆく人々には、それぞれにさまざまな事情があるだろう。
「めいている」を用いた直喩により表現されているのは、とある遊歩道である。その遊歩道には「老ダックス」つまり老いたダックスフントが歩いている。
ダックスフントは、ドイツ原産の胴長短足で、垂れ耳の犬種である。胴長の犬が遊歩道をゆく様子が集団でサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼をする人々に重なって見えたのだろうか。老いたダックスフントであるということからすると、年老いた人々の巡礼の様子だろうか。老いている犬であるから、ゆっくりとした足取りなのだろう。それが長い巡礼の旅で疲れている人々の足取りにかさなるのか。
「巡礼路コンポステーラ」という比喩があるとき、老いたダックスフントに思い悩むことや救いを求めることがあるのではないかと考えさせられてしまう。
一首に詠み込まれていないのは、老ダックスの飼い主である。老ダックスが巡礼する人々であるとすれば、飼い主はキリストや守護聖人や神や精霊に例えられようか。神の御心のままに巡礼する人々と、飼い主のリードで散歩する老ダックスとが重ねられている。
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