謎肉まん
りんちゃんへ
ほんと寒くなってきたね、年々寒いのが苦手になってきた気がする。これからもっと寒くなるのかと思うと私はイライラというよりも気力を失っている気がする。朝は特に起きられなくて、ほとんど毎日朝ごはんに辿り着けない。そんな冬の寒い朝ごはんにはほっかほっかの肉まんがあったらいいよねってことで、いまから謎肉まんの話するね、
友達と餃子パーティーをした時に、友達がこねたタネと私がこねたタネを比べると、私がこねたタネの方がなんとなくキュッと引き締まり、うまくできていたことがあって、それにはちゃんと理由がある。
こねるのが上手いというわけではなく、私の手のひらの体温が高いため、ひき肉の油が少し溶けて他の具材とまとまってキュッとなったというわけである。
眠たい子供のような熱い手のひらを持つ私は、夏場はひんやりした床や手すりを触れていないとなかなか寝付けないほど熱く、誰かと手を触れた時には眠いの?と聞かれるそれを料理で活かすことができるなんてとこの前の餃子パーティーで発覚してだいぶ嬉しい思いをした。この手を活かして何か作りたい。見たことないけど焼き立てジャパンの主人公も体温の高い太陽の手というのを持ってパンをこねているらしい。
私は大学在学中に粘土を細長く伸ばしてインスタレーション作品を制作していたのだけど、最近はなかなかそういった作品を作れていない。どこかで展示する機会を作ってからそこでどういった作品を展示しようかと家で考えて制作して準備するということがなかなか難しいからだ。
仕事も忙しく、展示も難しくて、粘土をこねたり伸ばしたりする好きなこととはだいぶ疎遠な生活になって寂しい思いをし、代わりとなるコネを探して家ではデュラムセモリナ粉と卵と塩をこねて生パスタを精製して展示を開くこともなく、作ったら食べた。
ミニマリストというわけじゃないけれど、制作したものが家に飾られることなく積み重なって部屋がどんどん重たくなっていくのを想像するとなんとなく残念な気持ちになる。その点料理は作ったものは食べてなくなるからいい。美味しかったら嬉しいし。と、今日も今のところ外で展示する予定がないので、この手を活かして作れる料理を思い浮かべると、この時期の寒い朝に食べたい、具と中身それぞれにコネが必要とされる肉まんが浮かぶ。
いつもはのろまだが、楽しいことに関してだけスピードは早く、1時間弱で8個の肉まんができた。
できたのは夜中だったので3つだけ蒸して食べたらあまりにも美味しくて、残りの5個もすぐに蒸す。しめじと生姜をみじん切りにして入れたので香りが良く、皮は分厚く膨れてもふもふして美味しい。再び出来上がった残りの5個もすぐに食べる。作るのに1時間くらいかかったのに食べるのは3分以下。
餃子パーティーの時、親しい友達に、しめちゃん普段何してるのか謎だよね。と言われた。私が謎と言われ始めたのは中学2年生のブラスバンド部の先輩から始まり、謎と思われることに若干の優越感を感じていたこともあったけれど、今はもう違う。なぜこんな真夜中に肉まん8個を作ってそれらを平らげたのか、こういうことをしている日常って言葉でなんと表すのだろう、確かに謎だな。だから謎と言われたら、そうかとうなずく。この腹には謎肉まんが8個詰まっていて、そして明日の朝ごはんの肉まんはない。
ゆみより