涙の理由
私は不器用で
涙でしか
愛を表現できないんだ
それでも
表現してよかったと思う
愛は見えなくて
不確かで
手ごたえがなくて
それをどう伝えればいいか
恥ずかしかったり
拒否されるのや
誤差が怖かったり
そんな理由で
簡単に伝えられない
外国では
ハグをしてビズをして
それで伝えたような
気持ちになるけど
実際は
そんなものに
本当の愛なんて
詰まってないのかもしれない
どう伝えればいいか
それに戸惑って
怒りみたいになったり
無口になってみたり
違うことを話してみたり
ただテレビを観て
駄洒落を言って笑ったり
でもそんなことじゃ
伝わらなかった
私はいつも
旅立つ生活をして
場を離れる時の寂しさを
知っている
一定の時間を
特定の人と過ごし
情はこびり付いて
別れの時に
「愛」に気づく
寂しさと愛は表裏一体で
辛すぎて
愛なんて要らないと
思う日もある
私は
自分が変わっているのが
とても嫌で
そのせいで
人に愛されていないのでは
私は人を
強く愛しすぎてしまうのではと
父が初めて言った
「自分は幸せだなぁ」と
感慨深く言っていた
私はたぶん
初めて父の愛を感じた
でも、その時は
父と私の間に
愛を伝えるツールが無くて
私の心は温まったけど
「ありがとう」と言えたかは
覚えていない
それから
父の死が近づき
毎度の帰国からパリに戻る時の
病室での父との別れ
もう会えないかもしれないと
そう思うと
一度病室を出ても
また父に言いたくて
最初の別れの時に
これまで一度も無かったほどに
泣きじゃくって
父に精一杯、愛を伝えた
恥ずかしいから
「愛してる」とは言えなかったけど
何度も「ありがとう」と言って
泣きじゃくった
涙の分量だけ
たぶん愛があったんだ
愛が深すぎるかどうかなんて
関係なかった
ただただ
「あなたが大切だ」という
気持ちを伝えたかったのだ
こんなふうに表現するのは
赤ん坊でもないし
本当に情け無いと思う
でも
私にはこのツールしかなかった
昨日、久しぶりに
その父との別れを思い出すほど
泣きじゃくって
愛を伝えた
衝動が止まらなかった
涙はきっと排泄物と一緒で
流せばスッキリするんだと思う
だから泣くんだと思う
別にそれが
排泄物であろうが
愛であろうが
私にはどちらでも良い
涙が私に
伝える勇気をくれるのだから
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