見出し画像

戦後史の検証を決意した理由

私のライフワークの中心的テーマは在米占領文書の研究である。

1980年から3年間アメリカに留学し、大学院で心理学と歴史学を学びながら、首都ワシントンDCの郊外の米国立公文書館所蔵のGHQ文書の研究に没頭した。

当時は年間100枚しかコピーできなかったため、筆写した資料は段ボール10箱を超えている。

留学前から作家の江藤淳氏とも連絡を取りながら、メリーランド州立大学マッケルディン図書館所蔵の検閲文書の研究から着手し、江藤淳氏はその中から『戦艦大和の最期』の検閲資料を発見し、マッカーサー記念館で開催された日本占領国際シンポジウムで「私は護国の英霊に導かれた」と感動的な講演をされた。

その輝かしいお姿を拝見しながら、なかなか重要資料を発見できない自分自身に悩み、留学生活の最後の半年間は研究生活を支え続けてくれた妻に帰国してもらい、誰にも会わないで毎日明星ラーメンと椎茸と乾燥ワカメだけを食べながら「背水の陣」で研究生活に没頭した。

なぜこの組み合わせで食事したのかよく覚えていない。長い間のひげ面はこの半年間から始まったが、当時のハングリー精神を忘れないようにとの思いから髭をカットしなかった。

戦後50年を契機に髭を剃って帰宅したところ、妻から「額縁のない絵みたい」と酷評され、慌てて再び伸ばしたこともあった。

令和6年4月6日、その妻が急性心不全で死去したため、思い切って心機一転を図るために髭をカットした。

そのために悲しむ人はいないと思っていたが、先日、髙橋塾の講義を開催した時のことだ。
かつて私の大学のゼミ長で、師範塾生、髙橋塾生でもある小学校教師のU君が、声を上げて号泣しているのを見て、妻と同じように悲しんでいる教え子がいることに気付かされた。

戦後史を検証し続けてきた私自身を象徴する髭がなくなったことへの寂しさ、喪失感がひしひしと伝わってきた。


●戦後史の検証を決意した理由

そもそも戦後史の検証のために米留学を決意した理由は一体何か。

ここから先は

3,769字

①歴史教育、②家庭教育、③道徳教育、④日本的Well-Being教育の観点から、研究の最新情報や、課…

理論コース塾生

¥990 / 月

実践コース

¥2,000 / 月

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?