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学生にすすめる一冊の本『あなたの「死にがい」は何ですか』①


はじめに

私自身のこれからの「生き方」を考えるにあたり、思い起こされた一冊が『あなたの「死にがい」は何ですか―人生五計説から考える人生談義』(草柳大蔵著)である。


草柳さんとは、某テレビ局の対談番組や、月刊誌でも2回対談させていただいた。

そこでの対談内容は、平成2年2月、ラジオたんぱ「明星大学の時間」にて「学生にすすめる一冊の本」として紹介し、同年10月号の部報めいせいにも収録された。

今回を含め4回に分けて、その内容を紹介したい。




学生にすすめる1冊の本
草柳大蔵著『あなたの「死にがい」は何ですか』
平成2年2月17日 ラジオたんぱ「明星大学の時間」放送
髙橋史朗



義父から教わった「いかに死ぬか」ということ

今日は皆さんに作家の草柳大蔵さんの『あなたの「死にがい」は何ですか』という福武書店から出版されている本を紹介したいと思います。

皆さんは「死にがい」について考えたことがありますか。多分、「死にがい」という言葉にびっくりされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「生きがい」については考えたことはあっても「死にがい」について真剣に考えたことはない、という方が多いのではないでしょうか。

実は私も1年半前までは「死にがい」について真剣に考えたことはありませんでした。私が「死にがい」について考えるようになったのは、一昨年の夏に私の父と家内の父を相次いで亡くしてからです。

家内の父は死ぬ10日前に私が住んでいる東京のマンションに「最期の別れをするために来た」と言ってやってきました。それから死の直前まで、死を自覚した父と毎日、生きること、死ぬこと、生きてきたこと、死にいくこと、その中での思いについて切実に語り合いました。

そして、最期は家族に看取られながら郷里の自宅の畳の上で死にたい、という生前の言葉通り、父は自宅に着いた45分後に、臨終の瞬間、ニコッと笑ってこの世を去りました。

実にみごとな死に方でした。これまで「いかに生きるか」しか考えたことのなかった私に父は「いかに死ぬか」を教えてくれたような気がします。

私はそのことを昨年、某テレビ局の草柳大蔵さんとの30分間の対談番組でお話しました。その後、月刊誌でも草柳さんと2回対談させていただきましたが、その時、私のその話を聞いて草柳さんが紹介してくれたのが、この『あなたの「死にがい」は何ですか』という本だったのです。

草柳さんはその時、次のようにおっしゃいました。

「僕は、以前『あなたの「死にがい」は何ですか』と言う本を書いたことがあるんです。生きがい論が全盛のときだったから、みなさんに驚かれたんです。でもね、どういう姿で死んでいくのかのゴールが見えなければ、毎日をどう生きるかなんて分からないでしょう。そう考えたからなんですがね。その本の中で、俳人の飯田蛇笏(いいだだこつ)が晩年、どんな心境であったかに触れたんです。蛇笏は次々と肉親に死なれましてね。一人はフィリピン戦線で戦死。また一人は外蒙古のラーゲリで事故死。父親は肺炎、母親は胃ガン。たった一人兵隊に行かずに残った子どもは、肺結核で亡くなる。ついに、蛇笏だけがひとり残された。しかし、そのとき「誰彼もあらず一天自尊の秋」と詠むんです。幸福論で見れば、蛇笏さんは気の毒ねということなのでしょうが、死にがい論で見ていくと、そういう心境で死んでいく人間が放つ光というものはものすごい。本が出たあと、読者から700通を超えるお手紙をいただいたんですが、その部分に共鳴したという方が一番多かった。ですから、髙橋さんが指摘なさっているところには大きな意味があると思います」

こうおっしゃったわです。



次回は、「人生五計説」についての内容です。

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