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・親学秘話―「不運」によって開かれた「ご縁」
●親学秘話
PHP研究所で1年間「親学研究会」を積み重ねた成果を『親学の教科書』として同研究所から出版し、平成18年一般財団法人親学推進協会が設立されました。
日本財団から1億円を超える助成を得て、「親学アドバイザー」の養成に全力を挙げ、1300人余の「親学アドバイザー」が誕生しました。
翌平成19年4月17日に開催された政府の教育再生会議第9回「規範意識・家庭・地域教育再生分科会」の有識者ヒアリングに招かれ、親学について講演後、次のようなやり取りがありました。
※肩書は当時のもの
●義家弘介(内閣官房教育再生会議担当室室長)
「親学研修の義務づけなど、思い切った提言を行いたい。高橋氏にご紹介いただいた団塊の世代による親学アドバイザー派遣は有用だと思う。張委員のご提案は、非常に的を射ているが、11~14歳の段階にディベートを加えていただきたい」
●品川裕香(教育ジャーナリスト)
「日本は予防的教育が非常に弱い。最先端の脳科学の知見、発達的視点の重要性、evidence based educationとそれを支える基礎研究の充実について、財政措置を含めて提言したい。自尊感情があって初めて、規範意識、道徳が身に付く。大人になってから自尊感情を高めるのは難しい。発達段階の初期に、徳育を通じて自己理解から自尊感情を身に付けさせ、それが規範意識、ひいては親学につながるような長期スパンでのダイナミックな提言を行いたい」
●門川大作(京都市教育委員会教育長)
「中高の段階で親学を学ぶ機会を設ける必要がある。また、妊娠や乳幼児期には母親が保健所で親学も含めて学ぶ機会を充実させると共に、父親も含めて学ぶ機会とカリキュラムを作れないか、保健福祉行政と教育行政を統括した取り組みが重要」
●海老名香葉子(エッセイスト・絵本作家)
「子供の顔や目を見て母乳を与えることで親子の情が育まれる。子守唄なども親の愛や、優しさを伝えることに通じる。家庭で躾をしてから保育園や学校に行かせるべきで、親学は基礎の基礎である。高校生ぐらいから、親になる覚悟やしつけを学ぶべきである」
●川勝平太(静岡文化芸術大学学長)
「脳の発達において、3~5歳くらいまでに運動や感覚が大いに発達するため、この3年間が非常に大切である。団塊の世代の子育て経験を持つお母さんOBが、現役母親世代と連携しながら、大切な乳幼児期の教育に当たるのは良いことである」
●小谷美可子(元女子アーティスティックスイミング選手・ソウル五輪メダリスト)
「親学は非常に大切であるので、放課後子どもプランの中で進めるのは良いと思う。また、母子手帳に押印して意識付けにつなげるなど、何らかの強制力につながる制度化、仕組み作りを行いたい」
●髙橋史朗(明星大学教授)
「家庭の役割には価値観形成に加え、文化継承の役割もある。例えば、茶道が自身を見つめ直す機会になったとの調査もある。文化継承を通じた人間形成があるのではないか。乳幼児と関わることで、親心が育つ。『子供の楽園』(渡辺京二『逝きし世の面影』平凡社、平成17年、参照)を取り戻す鍵がある」
●山谷えり子(参議院議員)
「文科省の『情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会報告』や、日本小児学会の『こどもの生活環境改善委員会』報告など、普遍的な提言が出されているが、母親に届いていない。・・・日本の伝統文化に根差す子育ての知恵なども盛り込んだ提言ができるとよい。・・・私は、子守唄や民話、神話、郷土の偉人伝などをよみがえらせる国会議員連盟の幹事長をやっているが、子守唄を聞かせようと呼びかけても、最近のお母さんは子守唄を知らない。市町村合併の影響から、全国で5000程度あるといわれる子守唄の資料も失われつつある。ふるさとの子守唄を、6カ月検診などの機会で集まる際に歌うことなどを含め。母性、父性を育て社会を変えるようなメッセージを発信したらどうだろう」
●浅利慶太(「劇団四季」創設者)
「緊急提言には大賛成。分かりやすく端的なものが良い」
●挫折した”親学推進法”
この審議を踏まえて、教育再生会議は2か月後に第2次報告を公表し「親学提言」を盛り込みました。
平成24年4月10日に超党派の「親学推進議員連盟」が設立され、設立総会に議員本人が49名、代理が32名参加しました。
会長には安倍晋三、会長代行には高木義明、顧問には鳩山由紀夫、副会長には、中曾根弘文、塩谷立、中山恭子、伊吹文明、河村建夫、池坊保子、江口克彦他8名、幹事長には鈴木寛、事務局長には下村博文、常任幹事には山谷えり子、有村治子が就任し、木村晴美氏と私が講演を行いました。
同議員連盟は「親学推進法」の制定を目指して世話人会と公開勉強会を積み重ねましたが、5月末の勉強会の資料は科学的根拠を欠くとして批判され、発達障害の会が要望書を提出されたことが契機となり、活動停止に追い込まれました。
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