持続可能な社会実現の核「幸福を感じる心と力」
●SDGsと「持続可能な開発のための教育(ESD)」の関係
今、世界には気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大など人類の開発活動に起因する様々な問題がある。
「持続可能な開発のための教育(ESD)」とは、これらの現代社会の問題を自分事として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたって恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally,act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動などの変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動である。
ESDは2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で我が国が提唱した考え方であり、2013年の第37回ユネスコ総会で採択された「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」(2015-2019)に基づき、ユネスコを主導機関として国際的に取り組まれてきた。
2015年の国連サミットにおいて、先進国を含む国際社会全体の目標として「持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたが、SDGsは「誰一人取り残さない」社会の実現を目指して、2030年を期限とする包括的な17の目標及び169のターゲットによって構成されている。
ESDはこのうち、目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯教育の機会を促進する」のターゲットに位置づけられているだけでなく、SDGsの17全ての目標の実現に寄与するものであることが第74回国連総会において確認されている。
持続可能な社会の創り手を育成するESDは、SDGsを達成するために不可欠である質の高い教育の実現に貢献するものであり、全てのSDGsの目標を達成するための基礎とされている。
これは、2019年の第40回ユネスコ総会で採択されたESDの新たな国際的枠組み「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」においても明確となっている。
すなわち、同総会で採択された決議に、「ESDが質の高い教育に関する開発目標に必要不可欠な要素であり、その他の全てのSDGsの成功への鍵として、ESDはSDGsの達成の不可欠な実施手段である」「加盟国政府および他のステークホルダーが゙、『ESD for 2030』の実施を通じて、ESDの行動を拡大することを奨励する」と明記されている。
●ユネスコが公表したロードマップと学習指導要領の改訂
ESD for 2030は,ESDの強化とSDGsの17の全ての目標実現への貢献を通じて、より公正で持続可能な世界の構築を目指すものである。
ESD for 2030の採択を受けて、本枠組み下で取り組まれるべき具体的な行動を示すロードマップがユネスコより公表された。
ロードマップでは、5つの優先行動分野(①政策の推進、②学習環境の変革、➂教育者の能力構築、④ユースのエンパワーメントと動員、⑤地域レベルでの活動の促進)及び6つの重点実施領域(①国レベルでのESD for 2030の実施(Country Initiativeの設定)、②パートナーシップとコラボレーション、➂行動を促すための普及活動、④新たな課題や傾向の追跡(証拠ベースでの進捗レビュー)、⑤資源の活用、⑥進捗モニタリングが提示されるとともに、GAPからの主な変更点として、SDGsの17全ての目標実現に向けた教育の役割を強調、持続可能な開発に向けた大きな変革への重点化、ユネスコ加盟国によるリーダーシップへの重点化が謳われている。
2016年12月に発表された中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善及び必要な方策等について」には、「ESDは次期学習指導要領改訂の全体において基盤となる理念である」と明記され、幼稚園教育要領及び小中高学習指導要領において、全体の内容に係る前文及び総則において、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられた。
●ESDは何を目指すのか
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