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日本発の「持続可能な開発のための教育」

昨日の投稿では、SDGsとウェルビーイングの関係について述べたが、今回はESD(持続可能な開発のための教育)について、深掘りしたい。


●SDGsとESDの関係

開発途上国向けの開発目標として2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、先進国、開発途上国を問わず普遍的な開発目標として2030年までに持続可能な社会を目指す国際目標である。

持続可能な開発のための教育(ESD)は2002年に開催されたヨハネスブルク・サミットで、日本の提案に基づいて開始されたものである。

ESDとSDGsの関係は、ESDはSDGsの教育に関する目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を保障し、生涯教育の機会を促進する」の中の指標4,7に、「2030年までに、持続可能な開発のための教育…を通して、すべての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする」と位置付けられている。

従って、ESDはSDGsの目標の一部を構成する要素であるが、国連総会においても、ESDが「質の高い教育に関する持続可能な開発目標に不可欠な要素であり、その他のすべての持続可能な開発目標の実現の鍵」であると確認されており、SDGsの17すべての目標の実現に貢献するものである。

2019年の国連総会において「持続可能な開発のための教育:SDGs達成に向けて(ESD for 2030)」が採択され、SDGsの実現を担う「持続可能な社会の創り手」を育成するための取り組みが一体的に推進されている。

●SDGsと学習指導要領との関係

平成28年の中央教育審議会答申は、ESDを「次期学習指導要領改訂の全体において基盤となる理念である」と明記し、以下のように述べている。

世界をリードする役割を期待されている。特に、自然環境や資源の有限性を理解し、持続可能な社会づくりを実現していくことは,我が国や各地域が直面する課題であるとともに、地球規模の課題でもある。
子供たち一人一人が、地域の将来等を自らの課題として捉え、そうした課題の解決に向けて自分たちができることを考え、多様な人々と協働し実践できるよう…先進的な役割を果たすことが求められる

平成28年 中央教育審議会答申


また、現代的な諸課題に対応することについて、以下のように述べている。

世界とその中における我が国を広く相互的な視野で捉えながら、社会の中で自ら問題を発見し解決していくことができるようにしていくことも重要となる。
国際的に共有されている持続可能な開発目標(SDGs)等も踏まえつつ、自然環境や資源の有限性、貧困、イノベーション等、地域や地球規模の諸課題について、子供一人一人が自らの課題として考え、持続可能な社会づくりにつなげていく力を育んでいくことが求められている

平成28年 中央教育審議会答申


育成を目指す資質・能力の具体例として、「自然環境の有限性の中で持続可能な社会をつくるための力」を挙げるとともに、資質・能力の3本柱の1つである「学びに向かう力・人間性等」に含まれるものとして「持続可能な社会づくりに向けた態度」を挙げている。

新学習指導要領の前文と総則において「持続可能な社会の創り手」を育成することが今後の学校教育や教育課程の役割として明記された。

これによって、SDGsの実現を担う「持続可能な社会の創り手」を育成するというESDの狙いが、学校種や学年、教科などを越えた教育課程全体の基礎となる理念と重なることになった。

●SDGsと道徳教育の関係

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①歴史教育、②家庭教育、③道徳教育、④日本的Well-Being教育の観点から、研究の最新情報や、課…

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