ビートルズ "A Day In The Life"、私が感じ取った曲の印象
ビートルズの楽曲ひとつひとつについて、私が感じたことをベースに、8項目の音楽的視点からポイント評価したコンテンツを公開しています。最後のアルバム LET IT BE から順に過去へさかのぼって、1曲づつ投稿しています。
第 88回目、今日の楽曲は...
アルバム SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND B面 6曲目 "A Day In The Life"
サウンド:★★★★☆
メロディ:★★★☆
リズム :★★★☆
アレンジ:★★★★
第一印象:★★★
スルメ度:★★★
独創性 :★★★★☆
演奏性 :★★
<★ ... 1点 ☆ ... 0.5点、5点満点、各項目の解説は最後にあり>
アルバム SGT. PEPPER'S の最後を飾る大曲。ジョンが最初と最後の部分を書き、ポールが中間部分(目覚まし時計のベルの後)を書いて、つなぎ合わせることで構成されている。ジョンのボーカルは、エコーが効いているせいかちょっと弱めで頼りない感じがするが、歌詞自体が幻想的なものなので、雰囲気的には合っていると思う。
イントロは、アコースティック・ギターのコードに、ややダークな音色のピアノがかぶってくる。Aメロ "I read the news today..." の 1回目は、アコギとピアノのコードをメインに、ベースがメロディアスなフレーズを弾いていて、印象深い。リズムはマラカスだけというシンプルさ。2回目に入ると、唐突にドラムがフィルインとともに入ってくるが、このタムがティンパニのような音で、荘厳な感じがする。このあともリンゴは、やたらフィルインの多いドラミングを披露している。
1コーラス目が終わると、オーケストラによる壮大で次第に音が上がっていくような、ある意味不気味なサウンドが満ち溢れてくる。この間、リンゴが律儀にハイハットで小節をカウントしていて、なんともほのぼのとした感じの中にも緊張感がうかがえる。この後、ピアノの 8分音符のコードのあと、目覚まし時計が鳴る。
ここからは、Bメロ "Woke up, fell out of bed..."、ポールのボーカルのお出ましである。スネアも拍の頭で叩いていて、ジョンの Aメロと比べると、リズミカルで軽快な感じがする。この対比が面白いところであり、この Bメロがあるがゆえに、このあと再度登場する Aメロが、グッと引き立ってくる。
キーは Gメジャーであるが、Bメロで Eメジャーに転調し、間奏部分(Bメロのあとの "Ahhh..." の部分)から Gメジャーに戻っている。Aメロでのコード進行は、G→Bm→Em→Em7→C→Em7→Am... ときわめてノーマル。Bメロも、基本 E と B7 の繰り返しでごく普通。普通でないのは間奏部分で、C→G→D→A→E となっているため、ちょっと異質な感じがする。これは、このあと Aメロに戻るために、あえてノン・ダイアトニックのメジャー・トライアドを繋げて、幻想的な雰囲気の演出をしているのだろう。
さて、なにかと話題に事欠かないのが、エンディング。文献によると、レコーディングに招集されたオーケストラのメンバーは、総勢 40人。これらの指揮を、ジョージ・マーティンとポールがとったという。各オーケストラの譜面には、その楽器の出せる最低音と最高音と、最初はピアニシモ、最後はフォルテシモ、としか書かれていなかったという、トンでもないシロモノだったようである。逆を言えば、そんな冗談のような譜面であったからこそ、あの壮大なオーケストラによるエンディング・サウンドが実現できたのだろう。
そして極めつけは、最後のピアノ・サウンド。ジョン、ポール、リンゴ、マル・エヴァンスが、3台のピアノで一斉に E のコードを弾き、その余韻をギリギリまで録音している。聴いているこっちとしても、この余韻がいつ終わるのだろうとハラハラしてくる。まさに、この超大作アルバム SGT. PEPPER'S にふさわしい終わり方だと思う。
と思いきや、レコードの一番内側の溝に、なにやら話し声が入っている。オートリターン機能のないレコード・プレーヤで聴くと、この「声」がエンドレスで延々と再生されることになり、誰の発案かは知らないが、例によってジョーク的な演出が、最後の最後まで堪能できるアルバムでもある。ちなみに CD だとエンドレス再生ができないため、フェードアウトしている。ここが LPレコードとの差でもある。
◇
これで、アルバム SGT. PEPPER'S は終わりです。総括しようにも、思うところが多すぎて書けないというのが正直なところ。ひとつ、レコーディング技術という観点から驚異的だったことを言うと、たった 4トラックのマルチトラック・レコーダで、これほどの「超大作」アルバムを作り上げてしまっているという事実。このアルバムは、1967年 6月のリリースなので、今から 57年も前のことである。そして、今聴いても、この先の未来、いつ聴いても、常に新鮮な響きを我々に与えてくれる。そんな、エバー・グリーンなアルバムなのである。
次回からは、アルバム REVOLVER です。
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