新型スキャナカメラ【Integration】の作製およびその経緯について
どうも気づいたら前回の投稿から1ヶ月も経っておりました。どうも、としおです。
今日は、その1ヶ月間で頑張って作製した新型スキャナカメラ:model[Integration]の紹介になります。結構長いのですが、時間ある人は是非読んで欲しい。
スキャナカメラの作製は、実は4代目(3代目は色々なアイデア倒れなので、実質3代目)。スキャナカメラとは何か?という方は、是非下の記事を読んでもらえると嬉しいです。
作製目的と経緯
目的:使いやすいスキャナカメラが欲しいため。
以前まで使用していたスキャナカメラは、CCDセンサを使ったスキャナカメラとして一定の能力を発揮してくれていました。
しかしながら、慣れない手加工で作製された機体は、光線漏れや謎のノイズ発生等、様々な問題を抱えていました。また長年の使用で各部劣化が進んでおり、適当設計のためメンテンナンス性も悪く、なかなか補修できない状態でした。
ならば新規作製、バージョンアップや!!…が、いつもの流れなのですが。そもそもスキャナカメラで撮る機会が減ってきている私。スキャナカメラをわざわざ復活させる意味があるのか。それをずっと考えていました。
さて話の流れをぶった切り突然ですが皆さん、なぜスキャナカメラが世に広まらないか考えた事はありますか。
確かに普通のカメラと違って三脚は必須ですし、一般的な写真と同等の物を撮影するには被写体の静止が求められるからじゃないの?と思う貴方。それは間違いではありませんが、一番は【撮影が非常に面倒くさい】という事に尽きると思うのです。撮影が面倒→撮る頻度が減る。これが現実です。
スキャナカメラ本体
交換レンズ
バッテリー
三脚
パソコン
以上が、スキャナカメラを撮る上で必要な道具達です。え、普通?そんな方は、下の動画を見てみましょう。
こんな大荷物を、撮影の度に店開きして撮影するのです。8×10カメラもびっくりな面倒臭さ。
若かりし頃(2年程前)までは、全てを入れた大きな荷物を背負って主要都市を回っていました。当たり前ですが、不審者感が凄まじいです。当時ですら職質を受けていたので、オッサン+デブ化した今では逮捕は免れそうにありません。撮影時の様子が写真に残っていましたが、これで渋谷を撮っていたのは自分でもびっくりしています(動画で顔が写り込んでいるの若干恥ずかしい)。
そんなわけで、使うと面白い写真が撮れるけど、圧倒的に面倒くさいスキャナカメラ。継続的に使い続けるには、簡単に使えるような、革新的な改造が必要不可欠でした。
これは新宿で撮ってた写真。人が多い場所ほど面白いが、その分見られる事も多い。
この問題を解決させるには、パソコンを小さくするしかありません。
とはいえandroidやLinuxではドライバが対応していません。タブレットwindowsでは、多くのマシンでスペックが低くて高画素データを扱うには向きません。またUSB-OTGがうまくいかず、撮影できない事も多々ありました。
最初はRaspberry PiやスティックPC等、色々と候補があったのですが…。ここにソリューションが一つ見つかりました。
このGOLE1と呼ばれるミニPCです。私はメルカリで18000円で購入しました。
この機種であれば、小型+windows+タッチパネルで、そこそこのスペックを持っております。
そして3Dプリンター。思った以上に精度が出るという利点から、基本構造は3Dプリンターで作ることに決めていました。筐体の設計自由度が高くなるだけでなく、私のような現物合わせ主義者にとって、再現良く繰り返し作製できるツールは非常に便利です。
ということで今回は、3Dプリンターを使い、GOLE1を埋め込んだスキャナカメラになります。モデル名の【Integration】とは、【統合】。カメラとパソコンを統合させ、使いやすいカメラに作り変えます。
作製プロセス
基本的に、ベースとなる機構は前回のモデルを分解して流用しています。それ以外のフレームは、全て3Dプリンターで出力しました。
Fusion360でモデリング。さすがに3ヶ月触ってることもあり、簡単な物ならすぐに作れるようになってきましたが、これはめっちゃ時間かかりました…。
作成したパーツを組み上げていきます。一体型で作りたい希望もあったのですが、ワークステージの大きさと、後述する反りの問題で分割式となっています。。
ネジ部分は、場所によりますが、分解頻度の高い場所を中心にヘリサートナットを導入しています。3Dプリンタだと、はんだゴテによる熱圧入ができて便利です。
3Dプリンタは使いだして3ヶ月ほどになりますが、ここまで大型のパーツを作製するのははじめてになります。
事前知識で分かっていましたが、大型物の出力は簡単ではありませんでした。特に反りに関しては非常に悩まされました。今回はプロセスパラメータよりも、構造でなんとか抑え込めないかと努力してみました。
はめ合わせの精度が必要なところは、ネジの遊びを大きくしたり、モルトでごまかしております…。多少見てくれが悪いですが、カメラにとって光線漏れは絶対避けなければならない部分。見えないところは雑な部分もあります。
あとは、やはり大型のものは失敗も多かったです。たぶん、それぞれのパーツを2個以上作ってると思います…。フィラメントも超大量に消費しました。失敗の山達。
現物合わせのために、何度も作り直したパーツも多数。
組立。ボディの積層方向へのヒビ割れは、裏面から穴埋め処理しています。
組み上げて、ヤスリがけして完成。アセトン処理しても良かったんですけど、マットブラックな筐体にしたいのと、汚い外見の方が愛着湧くのでコレで良しとしています。
ライティングするとめっちゃカッコ悪いのが悩み。
当たり前ですが、パソコンは取り外し可能です。GOLE1の良いところは、充電用MicroUSBと通常のUSBが横並びについているため、充電しながら使用することも可能です(16vを5vに降圧しています)。
前作との比較。前作と同等以下の大きさに収めることができました。
作例
最後に、作例と言いますか、テスト撮影してきた写真をアップします。
今まではMacBookと共に持ち歩いていたため、頻繁に移動したり、海付近で撮影は厳しかったのですが…。このスキャナカメラであれば、すぐに移動できる。最高のカメラに変貌しました。
色ノイズに関しては、未だに少し発生しています。今回は目立つノイズだけ消してしまっています。今後改善していきたい。
おわりに
今回のスキャナカメラ、ただ小さいパソコンを買ってきて、それを埋め込んだだけでしょ?と言われれば、それで間違いありません(笑)マイナーバージョンアップにすぎません。革新的なアイデアはなく、Raspy氏が作製したスキャナカメラから根本的な原理は何も変わっていません。
しかしながら、私が今回のスキャナカメラで訴えたいのはそうじゃないんです。これはエンジニアとしての【作った物を使い続ける努力の結果】なんですよ。
こういったプライドは、エンジニアのプライドとこだわりでしかありませんが、その積み上げこそが人生であり、生きた証として写真に残ると思っております。
スキャナカメラをはじめて作ったのは2015年。そこから今まで使い続けてきました。恐らくここまでスキャナカメラを使い続けている人はいないでしょうし、今後も使いやすくできる努力をしていきたいと思っています。
最後だけちょっと写真論も交えてしまっておりますが、せっかく使いやすくなったスキャナカメラ。御託はともかく、撮影しやすくなったのは事実。今後、更に充実した写真ライフを送っていこうと思います。
ではでは、そんなところで。