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意味記憶と意味記憶障害について

こんにちは。久しぶりの投稿となりました。
今回は題名の通り、意味記憶について、文献を基に学んだことをまとめていきたいと思います。

読んだ文献は
「意味記憶の評価法」 坂井麻里子  西川隆 臨床精神医学 第44回増刊号:237-243,2015  
です。2015年のものではありますが、大変参考になりました。

” ”は引用



論文では意味記憶の評価方法について詳しく書かれており、何回かに分けてまとめる予定です。今回はまず、意味記憶とは?という部分からまとめていければと思います!

意味記憶とは

”エピソード記憶が体験した出来事の記憶であるのに対し、意味記憶は普遍的な事実に関する記憶であり、誤や物体の意味など思考の素材となる「知識」は意味記憶に属する”

”意味記憶の獲得過程としては、通常、エピソード記憶の再符号化が繰り返されることにより、時間の経過とともに次第に重要な情報のみが抽出され、意味記憶となって蓄積される”

記憶の分類は様々ありますが、意味記憶は陳述記憶(言葉で表すことが出来る記憶)のなかの「知識」に相当する部分となりますが、これは過去に体験した出来事、学んだことが定着することで知識になるということですね。

陳述記憶はエピソード記憶、意味記憶と別れていますが、これは全く別のものではありません。

例えば

リンゴに対して、リンゴとは⇒赤い、甘い、木になる、秋になる、果物

ということを本やテレビでみたり、実際に食べたりすることを繰り返したから知識として定着して覚えているんですね。


一方、こんな面白いことも書かれておりました。

”両側海馬損傷によってエピソード記憶が重度に障害されている患者でも新しい知識を獲得できることが報告されている”

”意味記憶障害が目立つ意味性認知症の患者においても海馬が保たれていれば新しい知識が習得できることを示唆する知見がある”

といったように、どちらかが保たれていればエピソードを覚えていたり、新しく知識習得できることの報告もあるようです。

通常言われることとは逆の状態となるわけですが、こういったこともあるから脳は複雑で興味深いですね。

このあたりについてそういった目線で目の前の患者さんの症状を捉えていくと新しい気づきがあるかもしれませんね。

意味記憶障害と評価について


”意味記憶障害は対象が持っている意味の喪失として現れる。たとえば、語義失語の患者では言葉が流暢に復唱できてもその意味が分からない”

”貯蔵されていた知識や意味が脱落したために生じた症状であり、それらが保たれていても利用できない失語や失認とは異なることが詳しい検査によって明らかとなる。”

これは高次脳機能障害について学んでいる方については基本のことかもしれませんが改めてかなーりざっくりと記します。


失語
⇒わかっているけど、知っているけど、いざ話そうとすると言葉にならない、ということですね。失語症のタイプによっても異なりますが、分かりやすい例としてリンゴという語を用いて以下に挙げます。

・言葉が出ない際、頭の音や文字のヒントがあればその言葉を思い出せる。
 例:当事者「えーと、えーと、」
   ⇒セラピスト「リで始まる」
    ⇒当事者「リンゴだ!」

・意味は分かっているから、別の語で説明しようとする。(迂回操作、迂言)
  例:当事者「あの赤くて、丸いやつ、ほら青森で有名でしょ」など

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このようにその後が出ないだけで意味は分かっています。

頭の中のたんすがあったとして、そのたんすには言葉がすべてちゃんと入っている。ただどこの引き出しにしまってあるか分からず、言葉にたどり着かいない状態(アクセスできない)です。

この表現はこちらの本のなかにイラスト付きでのっています。

僕はこの表現がすごくしっくりくるので、よく患者さんに説明するときに使っています。

僕は就職してから買いましたが、今は学生さんも持っている人をみかけます。
養成校によっておすすめしているところもあるかと思います。

話がそれました。

失認
⇒これも色々と種類がありますが、ざっくり。やはり物自体の知識はあるけど、ある特定の感覚を使った時に分からないということですね。
視覚失認、相貌失認、聴覚失認、触覚失認、身体失認、その他などがあり、見た時分からない、聞いた時分からない、といった具合です。

これも語の意味は保たれているので、視覚失認であれば、音でわかる、触ってわかるなどが、保たれている他のモダリティを使えばわかります。

長くなってしまいましたが、意味記憶障害とは語の意味が分からなくなる=語に対する記憶が抜け落ちてしまうことですね。なので、「リンゴ」といわれても「リンゴ」って何?と初めて聞いたような答えを返すと言われますね。

要因

特に語義失語が出現するものとして意味性認知症が有名ですね。意味性認知症は側頭葉の萎縮を認めます。左優位だと物の名前、右優位だと人物についての記憶が障害されると言われます。

そのほかにも頭部外傷、ヘルペス脳炎、低酸素脳症などでも出現することが知られております。

まとめ

今回はまず、意味記憶障害についてまとめました。

一言で言えばその言葉に対する記憶が抜け落ちてしまうことですね。初期には言語の意味が抜けることが多いですが、進行すると、相貌や物、環境音なども理解できなくなると言われます。

語の意味が分からなくなるというのは結構インパクトの強いものかと思います。

論文では失語症や失認と異なる点について書かれておりましたが、これらを正しく評価することでリハの内容や関り、環境設定などにも違いが出てくると思います。

携わる機会が脳卒中後の失語症や失認を持つ方よりは少ない方も多いかと思います。

だからこそ正しく評価したいですね。

ちなみに今回の話は高次脳機能障害に携わっている方にとってはおさらいといった内容だったかと思います。

次回はまた論文内容を基に評価法をまとめていきます。

また次回よろしくお願いします!

それでは!


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