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意味記憶障害の評価について(言語面編)

どうも。たかです。

前回、意味記憶障害とは?ということを論文をもとにまとめました。
今回はその評価法についてです。


読んだ論文は本日も

「意味記憶の評価法」 坂井麻里子  西川隆 臨床精神医学 第44回増刊号:237-243,2015 

です。

論文の中では言語面と非言語的側面に分けられて書かれておりましたが、今回は言語面についてまとめていきたいと思います!

” ”部は引用です

評価はどのように行う??

”本来意味記憶は複合的な感覚様式で成り立っていることから、その障害は種々の感覚様式の領域に現れる。したがって、これらの障害を評価する検査は患者に蓄えられている知識を多面的な様式で問うものになる”

”既成の知能検査や言語、行為、認知に関する検査法の一部を用いて評価する”

”他の記憶障害、失語、失認などと鑑別することが重要であり、複数の検査の下位検査を組み合わせて評価する必要がある”

いずれかの感覚を介すればその概念(意味)にたどり着くのか、などを評価していきます。

意味記憶障害は意味性認知症でよくみられる症状であって、側頭葉前方の萎縮などによりみられやすいです。

初期には言語の意味に関する障害が出現しますが、進行すると環境音や相貌や物についても同定が難しくなり、それがなんだか分からなくなると言われます。

ちなみに語の意味が分からなくなると、「犬」と聞いて「犬」と復唱が出来ても意味を理解できないといった状態となります。

こういった症状は語義失語とよばれます。語の意味が分からなくなるということです。

言語的側面の評価


標準失語症検査(SLTA: Standard Language Test of Aphasia)
まずはこの検査から。これは失語症を評価するうえで言語聴覚士が用いる最もポピュラーでスタンダードな検査です。

「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」の大きく5つの大項目から出来ています。

”意味記憶障害を検出するには、理解障害と呼称障害の二方向性障害の所見があることを確認する必要がある”

”患者には語に対する既知感がみられない”

”呼称の場合、語性錯語が認められることが多く、音韻性錯語は目立たない”

ここではその言葉を聞いてもらったり、言ってもらおうとした際に出る反応についてですね。

既知感がないというのは、「りんご」とこちらが言っても「りんごって何?」と話すようなことがある際ですね。もうその語を始めて聞いたような感じです。

語性錯語について以下に記します。語性錯語は錯語の中の一部ですが、さらに分かれます。

語性錯語:ある語が別の語へ置き換わります。意味的に似ているもの(=意味性錯語。例:りんご⇒みかん)や意味的関連のない語(=無関連錯語。例:りんご⇒テレビ)への置き換えになどがあります。語を頭の中で選ぶ段階で誤っています。

音韻性錯語:ある語を言おうとした時、音が近い語へ誤ります(例:りんご⇒りんが、ぎんご、など)。語は頭の中で選べていますが音を選ぶ段階で誤っています。

「呼称」は絵を選んで言葉を言ってもらう課題です。そこで、語の選択自体が誤っていることが多いということですね。

”語の意味理解に比して、統語関係の理解は概ね良好であり、名詞に比べて動詞・形容詞・副詞の意味理解や、助詞・助動詞の操作は相対的に保たれる”

”語(物品)の理解さえ出来れば『口頭(書字)命令に従う』というような複雑な課題にも正答する。この点では他の超皮質性感覚失語の反応とは異なる”

ここでは語の理解自体が障害されており、文を理解することは出来ているということが述べられています。

「単語レベルだとわかるけど、文レベルになると理解が難しい」という方は多くみかけると思います。しかし意味記憶障害の場合は単語の理解が難しいということです。

この『口頭(書字)命令に従う』というのは複数の並べられた物品の中から、こちらの指示通りに物品を操作できるかというものです。

短い単語レベルは理解できていないけど文は理解できるということですね。

超皮質性感覚失語というのは、言葉の復唱は一定レベル保たれているが理解が難しいというところは似ています。ただ超皮質性錯語ではやはり指示が長くなる(複雑になる)ほど難しい様子はあります。こういった部分で分けることが出来ます。

次は別の検査から

日本版WAIS-Ⅲ成人知能検査

これは今はすでにWAIS-Ⅳまで出ており、一つ前のものになるのですが、検査内容の一部は引き継がれております。今回はWAIS-Ⅲでそのまま書いていきたいと思います。

以下の下位検査をみます(論文から抜粋してまとめた)
①「単語」:語彙に関する知識(例:冬とは何ですか?)
②「類似」:抽象的思考(例:ライオンと犬はどのようなところが似ていますか?)
③「知識」:一般的事実に関する知識(例:1年は何か月ですか?)

”いずれも「結晶性知能」の量を問うものであり、教育歴などにも左右される”

”意味記憶障害では、上位概念が保たれ、具体性の高いものや親密度の低いものほど障害される傾向にある”

”「知識」では意味記憶の貯蔵量と検索機能が評価できる”

結晶性知能という言葉がありますが、これは知能の種類の一つです。

知能は「結晶性知能」と「流動性知能」にわけられます。分かりやすく載っているサイトがあったのでリンクを貼ります。

https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koureisha-shinri/shinri-chinouhenka.html

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画像:健康長寿ネットHPより引用

この結晶性知能をみるわけですね。結晶性知能はこれまでの経験から蓄積されたものであり、高齢になっても維持されやすいものです。自身の周りの高齢者を想像していただければと思います。若いころに比べれば、とっさの判断やその反応速度は遅くなっても、これまでの経験等を基に色々なことを教えてくださいます。
そういった部分が低下していないかどうかということですね。

その他として

その他としては標準化された検査ではありませんが、ことわざの理解が出来るか常套表現の理解が出来るかというところでも評価が出来ます。

例えば、ことわざで言えば「犬も歩けば」といっても理解が難しいので続きが答えられない。常套表現で言えば「腹黒い」は「腹が黒い」というように言葉の意味通りにしか取れないといったことが例として書かれておりました。

また大事な部分で熟字訓の音読課題でも特徴的な誤りを記します。ちなみにこの辺は言語聴覚士の国家試験勉強でもよく目にするものです。

これは例えば「海老」は「えび」と読みますが、意味記憶障害の方は二つの漢字が組み合わさって読み方が変わることが分からず、「かいろう」とそのまま読むことがみられ、特徴的な部分と言われます。

僕は授業で習った時、衝撃的で結構すぐ記憶に入ったのを覚えています。懐かしいです笑

このあたりが言語面の評価となります。結構特異的なので記憶には残りやすいかと思います。ぜひ評価の参考にしていただければと思います。

まとめ

今日は言語面での評価についてまとめました。言語聴覚士が日々行う検査のものが多かったので、言語聴覚士以外の方は分かりにくい部分ももしかしたらあったかもしれません。

ただ音読や、ちょっとした質問でも分かることはあると思うので、評価はそこで出来ると思います。

もし近くに言語聴覚士がいる方であれば聞いてみるのもいいかもしれませんね。

はい。では今日はここまでにしたいと思います。長くなってしまいました。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

まとめていて自分も改めてしっかり丁寧に評価せねばと思いました。

また次回、非言語的側面についてまとめていきたいと思います。

それでは失礼します!!

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