【映画レビュー】「ソイレント・グリーン」(1973年 アメリカ)〜少し不思議で残酷なお話〜
【タイトル】
「ソイレント・グリーン」(1973年 アメリカ 97分)
原作 ハリイ・ハリスン著 『人間がいっぱい(英語版)』
監督 リチャード・フライシャー
脚本 スタンリー・R・グリーンバーグ
出演 チャールトン・ヘストン
【あらすじ】
2022年。世界は人口が増えすぎたために貧富の差が激しくなり、富裕層は住居を持ち、野菜や肉などを食せて快適な生活を送っていた。
一方、貧困層には住居はなく、路上や廃墟などで横になって眠る。
貧困層の人々の食事は、ソイレント社から配給される謎の加工食品「ソイレント・グリーン」という切符のような形をした緑色の薄い板状の食品のみだった。
この富裕層と貧困層の差が残酷なまでに広がった世界。
刑事である主人公・ソーンは、ソイレント社の幹部が殺害された事件を捜査していくうちに、衝撃の事実を目の当たりにしてしまう……。
【感想】
観ていて、息が詰まりそうになる映画です。
刑事なのに、被害者の自宅から高価な品々を平然と奪っていく主人公。
まるで押し入れに無理矢理、物を押し込んだかのように狭い場所で眠る人々など、この世界の異質さと残酷さにより、観ていて陰鬱な気分になっていく。
そして、ラストで明らかになる真相が、かなり強烈。
この映画が公開された1973年当時。発展しすぎた化学と、広がっていく格差に対しての警戒が描かれていた。
この世界には、救いはない。
残酷な未来しかなかったのだ。
現在は2024年。
この映画で描かれたような未来にはなってはいない。
だが、もし、ある日『ソイレント・グリーン』が配られるような日が来たら……我々は『ソイレント・グリーン』を口に入れることが出来るのだろうか……。
余談ですが、「ドラえもん」の生みの親である藤子・F・不二雄先生(1933年〜1996年)はユニークで楽しい漫画を多く生み出してきた一方、青年誌向けのハードなSF短編漫画を描かれていた時期があり、その作品の中には、この「ソイレント・グリーン」から影響を受けたような作品もあります。
特に「カンビュセスの籤」という漫画は、この映画から影響を受けて描かれた作品かもしれません