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博物館? 心霊スポット? 元捕虜収容所「ホアロー収容所」

 ベトナムは辿ってきた歴史が過酷だったこともあって、博物館の多くが生々しい展示物に囲まれている。その中でも軍事博物館に並んでアグレッシブなのが刑務所あるいは強制収容所の跡地だ。南部だとブンタウの沖に浮かぶコンソン島に造られたコンダオ刑務所跡地が有名だ。タイガー・ケージとも呼ばれ、ホーチミンのベトナム戦争証跡博物館にミニチュアがある。ハノイではハノイ・ヒルトンの別名がある「ホアロー収容所」が有名だ。

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 ホアロー収容所は元々はフランスが建設した施設だ。1896年に造られ、当初はフランス統治に対するベトナム人レジスタンスを収容していた。その後、ベトナム戦争時には北ベトナム政府が捕虜収容所として使用した。

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 ホアローは国鉄ハノイ駅の近くにある。現在は隣にハノイタワーが建っていて、雰囲気の落差がものすごい。

 ちなみに、このハノイタワーの近くに牛肉のフォーで有名な「フォー・ティン」の支店がある。3月に食べに行ったついでに寄ろうと思ったが、ホアローはコロナの影響で休業となっていた。

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 館内にあるジオラマだ。当時はこんな感じだったのだろう。

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 内部はエアコンなどの設置があったり補強はあるが、基本的には当時のまま残っているようだ。

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 当時の囚人が着ていた服、持ちもの、内部の様子やハノイ市街地の写真などが展示されている。残念ながら展示はベトナム語と英語だけで日本語はなかったはず。

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 1908年の囚人たちの写真だそうだ。入ってみるとわかるが、敷地はかなり狭い。建物となるとさらに小さいのだが、そこに多いときで2000人も収容されていたという。足かせをつけられている上に、首にもなにかつけられている。

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 奥の方には当時の様子を再現したマネキンがあるのだが、タイミングによっては来場者がいないので、結構怖い。

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 独房にもわざわざマネキンを置いている。この2枚は同じものだが、どっちにピントを合わせても怖い。

 ほかの房には死刑に使用したギロチンがあった。本物かどうかは不明だが。ここで無念の死を迎えた囚人も少なくない。そのため、実はこのホアロー収容所は心霊スポットとしても有名だ。

 CNNでも東南アジアの中でも指折りの怖い観光スポットとして紹介されたことがある。南部のコンダオ刑務所も有名な心霊スポットだ。実際には心霊スポットでなくても展示物が普通に怖い。大人が見ても怖いのだから、子どもが見たらトラウマ必須でしょう。だから、心霊スポットとしても有名になったのではないだろうか。

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 中庭にもいろいろと展示物がある。たとえばこれはベトナム人収監者が脱走するのに掘った穴なのだとか。ベトナム戦争時のベトコンが掘ったトンネルも各地で観光スポットになっているが、ボクなんかが入ると詰まってしまいそうなくらいに狭い。この脱走用の穴もそうだが、小柄なベトナム人だからこそできたものだろう。

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 敷地の裏の方にはこういったオブジェがある。慰霊碑なのだろうか。真うしろにハノイタワーが聳えていて、なんか厳かな雰囲気がない。

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 タイの地方都市にある、使われなくなった刑務所跡地を見学させてもらったことがあるが、中は侵入者がなく、落書きとかそういったものがなかった。当たり前だが、脱走も侵入もできない設計になっているからだ。

 でも、こういった場所を見ると、アメリカ兵くらいなら逃げられそうな気がしないでもない。この辺りは職員用ということもあっただろうし、逃げたところでハノイ市内のど真ん中だから、あっという間に捕まるけれども。

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 一番上の画像は女性用の房か。子どものマネキンもあるが、子どもも一緒に収容されていたのだろうか。

 南ベトナム軍やアメリカ兵も収容されていた。中には戦闘機乗り、爆撃機乗りもいて、ハノイ近郊で撃墜されて、ここに収容されたようだ。オバマ元大統領と大統領選を争った政治家もここに数年間も収容されていた。飛行機墜落直後に住民に助けられるその人物の写真も展示されている。

 現在は心霊スポットとしても知られるホアロー刑務所は、アメリカ兵たちが皮肉を込めてハノイ・ヒルトンと呼んだ。日本では劇場未公開だが、1987年には映画にもなった。

 子どもには刺激が強いが、ハノイ観光では一度は見ておきたいスポットだ。場所も行きやすいので、ぜひ行ってみてほしい。

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