ドローイング(描画)ツールを選ぶポイント
こんにちは。
スポーツの映像分析ソフト開発会社、Hudl(ハドル)社ただ一人の日本人社員のTKB84です。
最近、Twitter上でも、リアルな場でも、プレー映像をわかりやすくかっこよく見せることができるドローイング(描画)ツールについて書かれたり質問されたりすることが増えてきた気がします。
その中でもよく名前が上がるツールのひとつであるコーチペイント(Coach Paint)を前職で扱っていたこともあり、自分もある程度の見識はもっているつもりです。そういったこともあり、せっかくなので、
「ドローイングツールは、ソフトによって何が違うのか、なぜ価格にあれだけの違いがあるのか、どうやって比較したらいいのか」
ということについて1本記事を書こうと思い立ちました。
主に興味お持ちになるのはプロフェッショナルな方々向けかもしれませんが、「よりわかりやすい、より目を引く見せ方」という観点においては在野の学生コーチやパパコーチのお役にも立てるかもしれませんので是非ご一読いただければ。
また、サッカーに限らず、映像でフィードバックを行うすべての競技に活用できるTipsかと思います。
■ドローイングツールとは?
映像編集ソフトの一種で、お絵描きに特化したものを指します。
より伝わりやすくするために、既に切り貼りされた映像の中に、矢印や文字や図形を描き込むような作業で使用されるものですね。
TV局関係で使用されていたソフトが現場用にアレンジされたり、ルーツは様々なようです。
ここで、2つの映像を見比べてみましょう。
どちらも有名なドローイングツールを使って作成されたものです。
この2つのソフト、何が違うでしょう?
本記事を最後まで読んだらわかっていただけるかと思います。
■差がつく主な機能(とテクノロジー)
ドローイング系のツールを語る際、全てをテーブルに並べて同じ「ドローイングツール」として比較するのは、野暮すぎます。
なぜなら、搭載されているテクノロジーによって、利便性と価格が大きく異なるからです。
この項では見栄えの部分、使いやすさの部分で大きく違いがうまれる機能を紹介します。これを紹介したいがためにこの記事を書いたも同然です。
繰り返しますが、この機能の有無を考慮せずに価格だけを比較するのは野暮すぎます。
①クロマキー
見栄えを考えたときに、非常に重要な技術です。どんなものかというと、
こうやって並べると、一目瞭然ではないでしょうか?
クロマキーとは、テレビなどにおける映像合成技術のことなのですが、ドローイングツールにおいては描画(画像、シェイプ)などを選手とピッチの間に潜り込ませることを可能にしてくれます。
②トラッキング
いわゆる、サークルが選手の下を追尾してくれる、というやつですね。前段のTwitter動画にもありましたね。
これは、映像のフレームごとに、画像の位置を指定してあげて、それをなめらかに動かすという仕組みです。
③トラッキングの自動化
前項のトラッキングを、画像認識の技術で自動的にやってくれるという機能。素晴らしい。
ただ、この機能で必ず確認したいのは、
◆精度(ちゃんと選手を認識してついていけるか?)
◆マニュアル修正機能(精度が低いときに、マニュアルで修正は可能か?)
の2点でしょうかね。自動でも、ずれまくってたら意味がないし、ずれても直せないなら不便ですし。
④キャリブレーション
ピッチの場所を覚え込ませる機能を指します。
多くの場合、これを行えると下記のような利点があります。
◆選手間の距離がわかる
◆描画の遠近感を自動で作り出してくれる
◆ピッチの傾きにあった変形を自動で行ってくれる
下の2つは、地味ですが見やすさやカッコ良さを増すためには重要な項目です。
■ハイエンド機能無しでうまく見せる工夫
とはいえ、上記のような機能が載っているソフトは非常にお高いんです。うちのスポーツコードの最高ランクのものより高いものばかり。笑
なかなか手が出ない人はどうやって工夫したらいいのか、いくつかアイデアを記載します。他にもたくさんあると思うので、是非コメント付きリツイートにて紹介してください!
重ねる画像を工夫する
冒頭で紹介したTwitterの映像を改めて見てください。実はクロマキーを使っていないことがわかりますよね?しかし、いい感じに見えるのはなぜか?足元を見てみると…
実は完全な円ではなく、空きがある!見せ方のトリックなんです。でもこれだけで全然カッコ良さ変わりますよね。
透明度を調整する
皆さん普通に使っているテクニックだと思いますが、重ねる画像の透明度を変えるだけで、選手の足元に画像が差し込まれている風に見えるようにできるはずです。これだと伝わらないかもしれませんが。。。
楕円を上手に使う
これも皆さん普通に使っているテクニックかもしれませんが、楕円を上手く使うことで、より一層、ピッチ上を塗りつぶしたかのようなスペース可視化が可能になります。
■購入時に当たり前だけど見落としがちなポイント
本当に念の為に書くだけです、念の為。
□価格
当たり前ですね。
□使用可能なOS
自分の使用している(もしくは新規購入する)PCに対応しているか、は要チェックです。Macしか動かない、Windowsしか動かない、も可能性ありますので。
□推奨スペック
一般論として、描画ツール系はヘビーな作業となるため、高いスペックをメーカー推奨としている場合が多いです。買ったはいいが、自分のPCでは動作ノロノロで使い物にならない…という悲劇を避けるためにも事前に確認した方が良いでしょう。
■おまけ(もしくは蛇足)
弊社の扱うスポーツコードの最大の弱点がこのドローイングツール系の機能だったわけですが、先日のHudl Presents Performance Analysis 2020でもご紹介したとおり、既に専門チームを組織してドローイングツールの強化のための開発を始めています!ご期待ください!
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