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プロのミュージカル俳優になるための近道

私がプロのミュージカル俳優になることを決めたのは28歳になる直前のことでした。大学でミュージカルシアターを専門的に学んだわけでもなく、キャリアのスタートは他の俳優よりもかなり遅いものでした。しかし、わずか半年でプロのミュージカル俳優としてデビューを果たすことができたのです。今回は、その成功への近道をお教えします。

第一歩:地元のオーディションから始める

アメリカの大学院を卒業した後、ミュージカルの経験を積もうと思い立ち、地元で行われていたディズニーミュージカル『The Little Mermaid』のオーディションを受けました。当時、ミュージカル業界について全く知識がなく、そこがアマチュア劇団のコミュニティシアターだと思っていました。しかし実際は、AEA(Actors’ Equity Association)に認可されているプロの劇場、Franklin Performing Arts Company(以下 FPAC)でした。

幸運にも、私は無給ながらアンサンブル役を得ることができました。キャスティングが発表されてから知ったのは、この公演にはブロードウェイ俳優やアメリカでも有名な音楽大学の声楽教授、ワールドツアーに出演するプロの俳優たちが参加していたという事実です。演出や振付もブロードウェイ俳優によるものでした。

プロの現場の厳しさ


この公演のリハーサル期間はわずか2週間。プロの劇場では、役者に週給が支払われるため、リハーサル期間が短く効率的に進められます。そのため、一度与えられた振り付けや演出を再度教えてもらう時間はなく、登場のタイミングを失敗する、振り付けや歌詞を忘れると言ったようなミスに対する注意すらされないという厳しい環境でした。

私は毎日劇場に1時間以上早く到着し、振り付けを確認する時間を作りました。
そんな中、ある土曜日の昼の公演でキャストが出演できなくなり、代役を頼まれることに。チャンスだと思い、20分のリハーサルで振り付けを覚え、本番を無事に終えました。この時点ではまだ無給でしたが、プロとしてのスキルを高める大切な経験でした。

次なるステップ:「Bright Star」のオファー


その公演終了後、すぐにFPACから次の公演『Bright Star』のアンサンブルとして出演依頼を受けました。今回は交通費が支給される条件付きで、さらに選ばれた6人のダンサーアンサンブルの一人に選ばれました。リハーサル期間はたったの9日間
『Bright Star』のリハーサルでは、私が覚えるべき振り付けが多く、特に苦手な振り付けもありました。しかし、毎日リハーサル前や移動中の時間を使って徹底的に確認し、最終的に男性アンサンブルの中で最もその振り付けを踊れるようになりました。
あるキャストは私より若く、ミュージカルのキャリアも長いものでしたが、彼もその振りに苦戦していました。彼はパフォーマンスの朝も私に振り付けを確認してほしいと頼み、私は喜んで彼に振り付けを教えました。
リハーサルの中で、キャスト同士が助け合いながら成長するプロセスも、プロフェッショナルとして信頼を築く大切な経験でした。

プロのキャリアの始まり:「Tarzan」での有給契約


『Bright Star』の公演が終了すると、再びFPACからディズニーミュージカル『Tarzan』のオファーが届きました。アンサンブルとターザンの父親役という小さいながらも名前のついた役で、今度は初めて有給契約をオファーされました。

この公演では、Josh Stricklandというブロードウェイ初演でターザンを演じた俳優が再びターザン役を務める話題作でした。
リハーサル期間は2週間でした。
その公演では、アンサンブルは3つのレベルに分けられており、私はその中の真ん中のグループのトップレベルに位置付けられていました。
なぜ私がそう判断したかというと、いくつかのシーンで、上位レベルのダンサーグループに入り同じ振り付けを踊ったり、そのグループのメンバーと入れ替わって、彼らのポジションで踊ることが求められたからです。
このように、時折トップレベルのダンサーたちと同じ位置でパフォーマンスをする機会を与えられたことから、私が真ん中のグループの中でも特に信頼されていることを感じました。
また、その時は並行して私が卒業した大学院のオペラ公演にゲスト出演していたため、朝早くから大学でリハーサルを行い、その後FPACのリハーサルに参加するという多忙なスケジュールをこなしました。

結論:成功への近道


私がプロのミュージカル俳優になるために見つけた「近道」は、信頼されることでした。プロの現場で成功するためには、与えられた機会を最大限に活かし、リハーサルの準備を徹底することが何よりも大切です。現場で一貫して責任を果たし、信頼を築くことで、次のチャンスが巡ってきます。

どんなに遅いスタートでも、プロフェッショナルとして信頼される存在になることが成功への最も重要な要素です。信頼を得るためには、毎日自分ができる最大限の準備をし、与えられた役割や機会を全力でこなすことが求められます。
それが、私が短期間でプロとしてのキャリアをスタートできた秘訣です。

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