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適切なパートナーの選び方を、サッカーのポジションに喩えて考えてみた

年末に近づくにつれ、ここ数ヶ月新規の相談が顕著に増えている。

聞くと、このコロナ禍の対応で疑問があり、税理士を変更したいという声が多い。

コロナ離婚という言葉も聞くが、原理は全く同じだと思う。
今まで曖昧にぼかされていた問題点が、たまたま今回の環境変化で明るみに出たということだ。

全く何もしてくれない場合は論外なのであるが、何かはしてくれているものの、求めていることをしてくれないという期待ギャップが原因となっている部分は大きいように思う。

期待ギャップを解消する方法とは、"求めていること"を双方向な概念ということを認識することと、自分のタイプに合致する相手のタイプを適切に選ぶこと、この2点に尽きると私は考える。

今回は、中小企業の経営者とその支援者である税理士のタイプを、サッカーのポジションに喩えてみることを通じて、期待ギャップのない適切なパートナーの選び方について考えてみたいと思う。

結果として、税理士以外でのビジネスパートナーの選び方の参考にもなれば幸いである。

■経営者と税理士の基本的ポジション

サッカーのポジションは、おおまかに言えば以下の4つに分けられる。

①FW(フォワード)
②MF(ミッドフィルダー)
③DF(ディフェンダー)
④GK(ゴールキーパー)

まず前提として、中小企業の経営者は、得てして有能な営業マンであることが多い。

少なくとも会社組織から離れてゼロからイチを生み出していくようなベンチャー精神溢れる創業者は、一般的なサラリーマンと比べると、人を巻き込んでいく営業力が桁違いな人によく出くわす。

そうなると、サッカーで喩えた場合、ゴールという名の結果(=売上、利益、キャッシュ)を求めるという意味で言えば、前目のポジションであるFW(フォワード)タイプになることが多い

他人をサポートすることを主軸にしたビジネスを本業としている経営者も一定数いるが、結局は自分で利益を生む必要があるので、多かれ少なかれ前目のポジションを担っていると言えよう。

対して、税理士のタイプは、圧倒的にDF(ディフェンダー)タイプが多い

記帳を代行したり、申告書を作ったりと古典期なサービスを主軸としている税理士は、会社の財務を守るというDF、とりわけそれを専属として行うCB(センターバック)のタイプが多い印象である。

良いか悪いかはさておき、営業をやりたくないから事務職に、そして折角なら手に職を、という形で目指したという人が多い印象である。

中小企業の経営者と税理士は、リソースの少ない中小企業経営においては、攻守の棲み分けという意味では相性の良い組み合わせだと言える。

■FWとDFのスペースはどちらが埋めるのか

とはいえ、あまりに攻守の役割が分かれ過ぎていると、やはり弊害が出てくるものである。

サッカーでも、「攻撃は任せた、守備は任せろ」という攻守が分断されたパワープレー的な関係性になる可能性が高く、いわゆるポゼッションを確保出来ないという問題が生じる。

すなわち、一般的な組み合わせであるFWとDFの組み合わせにおいて、その間に広がる広大なスペースをどちらが埋めるのかというのが一つの課題となってくる。

組織が10人程度の規模になれば、一般に経理・総務担当者を雇えるくらいの資金力はつくので、その人にMF的な調整的役割を任せることはできよう。

ただし、中小企業の大多数を占めるそれ以下の人数のスモールビジネスにおいては、リソースの観点からそれが難しい場合が多い。

そのようなMF不在の中、FW的な経営者がボールを取りに下りてくるのか、あるいはDF的な税理士がサポート的に攻め上がるのかの二択が浮かび上がる。

特に昨今のコロナ禍を考えると、売上の伸び悩みは顕著で、FWである経営者が攻めあぐねている時間は多くなっているはずだ。

このような場合は、DFが効果的にオーバーラップし、おとりの動き出しをしてみたり、気の利いたワンツーのポストプレーをしたり、ダイレクトにパスをつけてみる等と色々と工夫が求められる。

しかし、全ての税理士がそれが出来るのかというとそれは難しいと言わざるをえない。

その理由は、全ての税理士には得意とするポジションが異なるからである。

■サッカーのポジションで喩えると税理士は4種類に分けられる

完全に私の独断と偏見であるが、税理士をその得意とする領域で4つのポジション別に分けてみると、以下のようになる。

①FW(フォワード)タイプ

いわゆるイケイケ系で、YouTubeや講演等ガンガンに手を出し、営業力・マーケティング力を全面に打ち出すタイプ。
税理士業という特性もあるが、全体の2-3%程しかいない印象である。
②MF(ミッドフィルダー)タイプ

税務よりも経営に重きを置き、組織をうまく組み立て成長させるようなデザイン力やコーディネート力を発揮するタイプ。
攻撃的MFと守備的MFがいるように、概念として範囲は広いが、総じて攻守のバランスを取ることを目的としている点を共通項とする。
人によっては中小企業診断士やFP、MBA等の経営分野の資格をダブルライセンスとして取得したり、自分で別会社を経営したりする人もいる。
全体の20%前後ではないかと思われる。
③DF(ディフェンダー)タイプ

前述の通り、記帳代行や申告書を作ることを通じて会社の財務的基盤を確保しようとするタイプ。
基本的にはそれに専念しようとするCB(センターバック)タイプが多く、大手事務所に多く存在するような国際税務や組織再編税制、医療法人等の特殊税務分野に特化した人もこのカテゴリーに含まれる。
また、例えば銀行出身の強みを活かして資金調達等のファイナンス分野に特化したり、社労士とのダブルライセンスを活かして助成金業務も行ったりすることで事業をアシストするSB(サイドバック)タイプもいる。
前者は全体の60%程度、後者は全体の10-15%程の印象である。
④GK(ゴールキーパー)タイプ

会社の最後の砦・用心棒として、税務調査を強みとして会社を守るタイプ。
特化の程度にもよるが、全体の5%未満で、税務署出身の税理士に多い印象である。


このように、一概に税理士と言っても得意とするポジションが異なるということである。

よって、例えば「税務調査を強みとしている税理士事務所に、売上の悩みや経営の悩みを相談したけどダメだった」という悩みは、GKにFW・MF的な役割を求めているのと同義であり、結果として認識ギャップが生じてしまう可能性が高い。
つまり、GK的役割の税理士を顧問につけるのであれば、自社がFW〜DFまでの比較的広範囲な役割をこなせるような人材確保出来ている場合がマッチすると結論付けることができる。

対照的に、経営者がFWに専念したい場合は、MFの役割もこなせる税理士を探せば良いということも言えるだろう。

このように、経営者自身のタイプと自社のリソースを考慮して、それにマッチしたタイプのパートナーを探すことで、期待ギャップを減らすことが出来ると考えられる。

■おわりに

ちなみに私自身がどこのポジションを得意としているかで言うと、MF、とりわけ守備的なボランチのポジションになると思う。

具体名を挙げると、日本代表でいうと長谷部誠選手。この選手を理想型としている。

基本エリアは守備的MFで攻守の要として存在しながら、その卓越した状況判断能力で、危険を察知すればCBまでカバーリング、人が足りなければSBも出来るし、緊急事態にはGKも果たす。

勿論どのポジションが良いのかは、相手がある話なので一概には言えないが、今後DFタイプの税理士にもMF的な要素は多かれ少なかれ絶対的に必要になると個人的には考えている。

本当の意味で会社を守ろうとしたら守備だけでなく、攻撃のサポートも不可欠というのは経験として多く学んだからだ。

適切な節税を行うにも、売上の見込みがないと効果的に実施することが出来ないし、何より本当に守備を極めたいと思ったら、攻撃を含めた経営全体の理解が必要だと気づいたからだ。
その発想で中小企業診断士の取得を目指し、なんとか今年1次試験を突破した現在地である。

今回は、経営者と税理士が適切なポジションの関係性についてサッカーに喩えて述べてきたが、結局のところゴールという会社の目的達成を共に目指し、共有できているかにかかっている。

要は同じユニフォームを着て、同じピッチで同じチームとして戦えるか、だと思う。

タイムイズマネーな現在、少しでもミスマッチを減らし、自分自身に合う適切なビジネスパートナー選びの参考になれば幸いである。


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