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現状突破の一つのアイデア/順序にこだわりを持つ

久々に、以前やっていたシリーズものをやってみたいと思う。

税理士なのに変だと思われるかもしれないが、私はクライアントとの打合せでは極力税金の話をしないことを心掛けている。

"税金はあくまで経営の一手段"という考えがあるため、打合せ中は主にクライアントの経営の話を掘り下げることにエネルギーを割いている。

誤解されたくないので言っておくと、税金の分野を軽視しているというわけではない。
それはそれで必要であることは明白だし、プロとして専門的な知見を提供することは大いに重要。それは言うまでもない。

ただそれを、クライアントに対してどう発揮するかどうかという順序の話である。

  ※   ※   ※

なぜこのように順序を重視しているかというと、その方が本来の業務が、あるべき形で機能することを経験から知っているからである。

私の経験上、自分の今手掛けている経営の話を聞かれて、嫌々話す社長はほぼいない。寧ろ、目を輝かせて熱弁を振るってくれる方ばかりである。

それはそうだろう。誰にお願いされたわけでもなく、自分でやりたくて始めたビジネスである。情熱なくして進められない。

その着いた火を消さずに、より加速させるのが、健全な経営の在り方。そのために社長よりも私が得意なことは手伝うというイメージである。

経営の話がキャンプファイヤーのごとく燃え上がってくると、必ずと言ってお金や税金の話に戻ってくる瞬間がくる。
この瞬間こそ、本来の専門性を発揮させるべきタイミング。

具体例を、打合せ形式で示してみよう。

社長:新規事業で○○というものを今考えているんだよね。
私:面白そうですね。経緯から詳しく聞かせてもらえますか?
社長:…(省略)… 
 ※商品・マーケティング戦略などをひと通り議論し、20~30分後
私:よくわかりました。ちなみに、どれくらいで売上が立つイメージですか?
社長:最初は○○くらいかな。起動に乗ったら○○くらいで、口コミで広がっていくと思う。
私:やはり少し時間はかかりますよね。では、新規事業が軌道に乗るまでの間、既存事業についてもフォローしておいた方がよいですね。損益分岐点の売上高が○○円なので、そこを切ると借入返済などで資金繰りが厳しくなります。最近、手形を受け取ったり、請求の入金が遅れているなどがあったりしますか?
社長:最近、手形はあったね。入金日は○月。
私:それだと新規事業に投入する資金に支障が出そうですね。もう少し詳しく試算してみて、不足しそうであれば早めに借入を検討してみましょう。それと、新規事業に伴って人の配置などの問題は大丈夫ですか?
社長:軌道に乗るまでしばらく○さんを新規事業の担当につけるが、既存事業の方で少し人手が不足しそうなので、アルバイトを募集してるよ。
私:なるほど。ちなみに前期より給与を増やすなどの条件を満たすと、税制優遇(※)が使えるかもしれません。
社長:なるほどそれは良いね。ちょうど担当につける○さんには、給与を増やしたいと考えていたところで。税金が下がるなら一石二鳥だね。
私:それなら新規事業の状況をみつつ、決算賞与で対応するのがよいかもしれないですね。今の進捗状況と見込みについて計算しておきますね。

およそ、このようなイメージである。

分かるように、税金の話は最後のエッセンスでしかない。

この順序を無視してわたし発で税金の話ばかりしても、理解されないか、されても深くまで刺さらない。

順序を間違えないことで、相手のニーズにフィットした形で、本来の業務が、あるべき形で機能することになると信じている。

  ※   ※   ※

他の業界の方からすれば驚かれるかもしれないが、税理士などの士業は専門家として何かと自分自身の専門領域だけを語りがちである。

職人的と言えばそうなのかもしれないが、仕事は相手あって前に進むもの。

ならば、その伝え方についても、ある程度こだわる必要があるはず。

士業だけに限らず、自分の本来の業務を果たすためには、必要な順序を経ることが大切だと考えている。

現状突破の一つのアイデアとして、参考にしていただければ幸いです。

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あさがお税理士事務所
代表税理士 伊藤貴文

あさがお税理士事務所 | 東京代々木の税理士事務所 - 親切丁寧な経営者のパートナー (asagao1011.online)
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