【中医基礎理論 第8講】 中医学の特徴:弁証論治 - オーダーメイド治療をするなら弁証論治を学ぼう -
前回までの記事で、中医学の特徴の一つ「整体観念」を学びました。
今回は中医学のもう一つの特徴である「弁証論治」をご紹介します。
弁証論治も診断や治療だけではなく、未病治にも必要不可欠な考えです。
そして、中医学がオーダーメイド治療といわれる所以でもあります。
しっかりと理解しましょう。
弁証論治とは
弁証論治は中医学特有の診断や治療を決定する重要な方法論の1つです。
治療に関する方法論は「弁病論治」、「弁証論治」、「対症治療」の3つがあります。
弁病論治:病気を分析し、どの病気にあたるかを判断し治療方法を確定すること
弁証論治:病気を分析し、どの証にあたるかを判断し治療方法を確定すること
対症治療:病気に伴う症状を和らげる、あるいは消すための治療をすること
この中で「弁証論治」は中医学特有の方法で、西洋医学には無い方法論です。
病と症と証の違い
病と症と証という似たような言葉が出てきました。
ここでは、それぞれの意味を理解しましょう。
病
病とは、「特定の病因、発病形式、病機(機序)、進行規律、回復規律を持つ完全な一過程」です。
難しいですね、笑
簡単にいうと病気の始まりから終わりまでの全てが「病」です。
風邪(感冒)であれば「ウイルスに感染してから、ウイルスが消滅して完治するまで」が病です。
風邪(感冒)や肺炎など診断名がつくものは病に含まれます。
症
症とは、「疾病の具体的な臨床表現」です。
病に伴って現れる「症状」のことです。
発熱、悪寒、鼻水、倦怠感などが症状に含まれます。
*中医学では頭痛、耳鳴り、腹脹などの自覚症状を「症状」といい、面色白(面は顔のこと)、脈浮数などの他覚症状を「体征」といいます。
証
証とは、「疾病の進行過程における、ある一段階の病機概括」です。
簡単に言えば「今、まさに診ているその瞬間の患者への診断」が証です。
風邪を例えにみていきましょう。
西洋医学では、風邪は初日に診察しても、2日目に診察しても「風邪」で、基本的に診断は変わりません。
その点、証は違います。
初日と2日目、3日目で証が変わることがあります。
①初日:39度の高熱がみられた。
②2日目:37.5度まで下がっていたが、まだ熱はある。口や喉が渇く。
この場合、初日の診断は「実熱証」ですが、2日目の診断は「陰虚証」となり、弁証が変わるのです。
証が変われば、治療方法が変わります(診断が変われば治療方法が変わりるのと同じです)。
つまり、弁証論治を行えば、その時その患者に対して最も適した診断と治療ができるのです。
こんな場合もあります。
AさんとBさんが風邪をひいた場合、西洋医学では二人とも「風邪」と診断され同じ治療を受けます。
ところが、中医学では病名が風邪でも、原因や体質により証が異ることがよくあります。
AさんとBさんで証が異なれば、同じ風邪でも違う治療を行います。
まさに患者一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療です。
鍼灸や漢方がオーダーメイド治療と言われる所以は、「証」という概念があるからなんです。
「証」って、すごいと思いませんか?
弁証と論治は必ず一致させなければならない
患者の情報を集めて分析し、「証」を判断することを「弁証」といいます。
弁証の結果をふまえて治療法を確定することを「論治」といいます。
弁証論治は「弁証」と「論治」を合わせた言葉です。
弁証は診断(中医学的診断)で、論治は治療方針であるならば、弁証と治療方針が異なったらどうなるでしょう?
大変なことになりますよね。
高血圧の患者に昇圧剤を投与するようなものです。
弁証と論治は必ず一致させなければなりません。
貧血の患者を「血虚証(血が少ない状態)」と弁証(診断)したら、治療方針は「補血(血を補う)」となります。
もし、不一致させてしまうと・・・患者への悪影響は計り知れません。
同じ病気でも治療が異なる?
弁証論治は本当に便利です。
中医学では「同病異治」、「異病同治」という言葉があります。
同病異治:同じ病気でも治療法で治す
異病同治:異なる病気でも同じ治療法で治す
同病異治
例えば、風邪は風邪でも証が異なれば治療法が異なります。
風邪の原因が「寒」にあれば弁証は「寒証」となり「散寒」という治療方針に則って治療を行います。
一方で、風邪の原因が「熱」にあれば弁証は「熱証」となり「清熱」という治療方針に則って治療を行います。
この様に、同じ病気でも異なる治療法を用いることを「同病異治」と言います。
異病同治
風邪と胃潰瘍は異なる病気ですが、証が同じであれば同じ治療法で治すことができます。
これを異病同治と言います。
風邪と胃潰瘍、どちらも「気虚証」という弁証であれば、「補気」という治療方針に則って治療を行います。
この様に、異なる病気でも同じ治療法を用いることを「異病同治」と言います。
弁証論治って、本当に便利ですね。
*図:一つの病気にも様々な証(色)があるので、証(色)が異なれば治療は異なる。異なる病でも証(色)が同じであれば、同じ治療で治せる。
弁証論治は病を選びません。
どんな病であっても弁証論治をすることができます。
西洋医学では手の施しようがない病気でも、弁証論治を使えば何らかのアプローチすることができます(絶対治せるということではありません)。
患者に最適な治療を行うことを可能にする「弁証論治」を、ぜひマスターしましょう。
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