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【中医基礎理論 第47講】 -人体の基本物質- 宗気って何?宗気の生成、分布、機能のまとめ!

宗気

宗気とは、呼吸によって得られる自然界の清気と、脾胃から得られる水穀の精気が合わさってできる気で、胸中に集まります。《霊枢・五味》では、宗気が胸中に集まる場所を「気海」、または「膻中」と呼んでいます。

*前回学んだ「元気」は下腹部の丹田に集まります。この部分も「気海」といいます。2つの気海を区別するために、胸にある方を「上気海」、丹田にある方を「下気海」ともいいます。

1. 生成と分布

宗気の生成には二つの源があります。

  1. 脾胃の運化によって化生される水穀の精気。

  2. 肺が自然界から吸収する清気。

これら二つが結びついて宗気が生成されます。つまり、宗気は後天の気に属します。

宗気は胸中に集まり、その後全身に分布します。分布する経路は三つあります。

  1. 肺に向かい、喉を通り呼吸を促進する。

  2. 心脈に貫通して、血液の循環を促進する。

  3. 三焦を通って下に向かい、丹田(下気海)に至り、そこから足の陽明胃経の気街(鼠径部)を通じてさらに下へ流れ、足に至ります。

《霊枢・邪客》には「宗気積于胸中,出于喉嚨,以貫心脈,而行呼 吸焉(宗気は胸中に積聚し、喉を通り、心脈を貫き、呼吸を行う。)」と記されています。*喉嚨(こうろう):喉のこと。

2. 生理機能

宗気の生理機能には、主に呼吸の促進、気血の循環促進、先天の元気を補助するという三つの側面があります。

  1. 宗気は息道を通り、肺の呼吸を推動する
    宗気は肺の呼吸を促進するため、呼吸、言語、発声のすべてに関連します。宗気が充実していると、呼吸はゆったりと安定し、言語は明瞭で、声は大きく力強くなります。逆に宗気が不足していると、呼吸は短く浅くなり、言葉が不明瞭で、声も弱々しくなります。

  2. 宗気は心脈に貫き、血液の循環を促進する
    血液の循環、心拍の強さやリズムなどはすべて宗気に関連しています。《読医随筆・気血精神論》には「宗気者,動気也。凡呼吸、語言、声音,以及肢体運動,筋力强弱者,宗気之功用也。(宗気は動気である。呼吸、言語、発声、さらには身体の運動や筋力の強弱は、すべて宗気の働きである。)」と記されています。宗気が充実していると、脈拍は安定して力強く、リズムも一定です。逆に宗気が不足していると、脈拍は不安定で乱れやすく、力も弱くなります。

    宗気の盛衰を表す場所に、「虚里(こり)」があります。虚里は左乳下にあり、心尖拍動の部位に相当し、宗気の盛衰を表します。《素問・平人気象論》では「胃之大络,名曰虚里,貫膈絡肺,出于左乳下,其動応衣,脈宗気也。(胃の大絡、名を虚里と言い、横隔膜を貫き肺を絡い、左乳下に現れる。その動は衣に応ず。宗気の脈なり。)」と記されています。虚里の拍動が正常であれば宗気が充実していることを示します。一方、拍動が激しくなり、衣に触れるほどであれば宗気の大虚を意味します。そして、拍動が消失は宗気の喪失を意味します。

    宗気が心脈を貫き、気血の循環を促進するため、宗気が不足すると血行が滞り、血瘀や瘀血が発生する可能性があります。臨床では脈象を通じて宗気の盛衰を診断することも多いです。

  3. 先天の元気を補助する
    元気は三焦を通じて下から上へと向かい胸中に達して、宗気を助けます。一方で、宗気は上から下へ向かい、丹田に蓄積され、先天の元気を補助します。こうして先天の気と後天の気が結びついて、全身の気を形成します。したがって、気が不足する場合、先天的には腎、後天的には脾と肺に原因があるとされています。

宗気は自然界の清気と水穀の気が合わさって化生されます。

水穀の気は「営気」と「衛気」という二つの気からなります。

次回からは、「営気」と「衛気」について学んでいきます。


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