[2024-10-29] マーケット振り返り
日経平均株価の続伸と背景
2024年10月29日の東京株式市場では、日経平均株価が298円高の38903円で取引を終了し、連続で上昇した。前日には大幅な上昇があったため、利益確定売りによる一時的な反落が見られたが、これを支えに再度買い戻しが進行した。米国の長期金利が上昇した影響で、金融株に対する投資家の関心が高まり、特にメガバンクが値を上げた。加えて、後場の終盤にかけて38900円を上回る水準を維持し、引けにかけてさらに強含みを見せて高値引けとなった。
東証プライム市場の銘柄動向
当日の東証プライム市場では、上昇銘柄数が1200を超え、全体の約8割に達する結果となった。特に銀行、証券商品先物、鉱業、非鉄金属などが顕著に値上がりした。業種別では、ガラス土石や金属製品などが一部下落したが、多くのセクターが上昇傾向を見せた。影響の大きい銘柄として、ソフトバンクGやアドバンテスト、リクルートHD、東京エレクトロン、日東電工などが堅調であった。一方、中外製薬やTOTO、7&iHD、ダイキンといった銘柄は軟調に推移した。
衆院選挙と政策への期待感
27日の衆院選挙で、連立与党である自民党と公明党が議席を減らしたことが市場に影響を与えた。これにより、連立与党の政策が一部修正される可能性が出てきたため、投資家の間では新たな財政政策への期待が高まっている。また、国民民主党が支持を得て議席を増やしたことで、減税や社会保険料の軽減など「手取り増加」政策への関心が高まっており、来年の参議院選に向け、これらの政策が更に市場を活性化する可能性がある。
さらに、石破首相が他党の政策を一部採用する姿勢を示したため、市場では財政政策に対する期待が生じた。この政治的不透明感の解消が株価の底支え要因となり、買い戻しが進んだ。加えて、米国長期金利の上昇が続いていることから、利ザヤ拡大を期待した銀行株や証券株が買われ、東証プライム市場における金融セクターの強さを引き出した。
投資家心理と取引の特徴
今回の日経平均の上昇は、短期的なリバウンド狙いであると考えられる。売買高は15億株台と低調であり、特に海外の投資家による積極的な買いが目立った。これは、総選挙を通過したことで政治的な不確実性が低減し、今後の財政政策への期待が膨らんでいることが背景にある。また、海外勢の買い戻しも日経平均の上昇を支えた一因である。
また、米国市場での影響を注視しているため、決算内容に応じて銘柄が日替わりで物色される傾向が見られる。特に予想を上回る決算を発表した企業への資金流入が増加しており、直近で調整が続いていた銘柄についても、先行して買いに向かう動きが広がりつつある。心理的節目である39000円に接近することで、投資家心理に影響を及ぼす可能性があるが、積極的な売り仕掛けは避けたいとの見方が広がっている。
銀行株や証券株の強さ
米国の長期金利上昇が、国内の金融セクターにプラスの影響を与えている。具体的には、三菱UFJや三井住友FGなどの銀行株が上昇し、利回り改善の期待から証券株や保険株にも買いが入っている。中でも、野村や大和証券、第一生命、東京海上などが目立って値を上げた。さらに、日東電工やさくらネットといった好決算銘柄が買われる傾向も見られた。
このように、特に銀行株と証券株の強さが際立ち、これらのセクターが市場全体を支える構図となっている。金融業界全体の利回りが改善することで、投資家の資金がこれらの株に集まり、さらにポジティブな流れを形成している。
政治的要因による影響
選挙の結果を受け、与党が過半数を割り込んだことにより、金融所得課税など投資家にマイナスとなる政策が打ち出される可能性が低下した点も市場には好材料となっている。特に、自民党と公明党が特別国会において他党と連携を図ることを検討している状況にあり、政策実現に向けた柔軟な姿勢が投資家の安心感を引き出している。
国民民主党が減税や社会保険料軽減を掲げて議席を伸ばしたことも、現役世代への支援という点で市場に好意的に受け取られている。結果として、今後の政策の行方次第では、投資家の間でさらなるリスクオンの姿勢が強まる可能性もある。
まとめ
29日の東京株式市場では、政治的な要因と米国の長期金利上昇が相まって、日経平均株価が堅調に推移し、39000円に近づく高値で引けた。金融株が市場の牽引役を果たし、海外勢の買い戻しや予想を上回る決算が発表された企業への資金流入が目立った。総じて、日経平均は堅調さを保ちつつあるが、今後も米国市場の動向や決算シーズンの進展による影響を見極めながらの展開となりそうである。