籠絡の悪魔 問答篇
悪魔「クックック、俺が憎かろう。お前の人生を最悪なもなにしたのは他でもない、俺だ」
「なにが最悪かわかるということは、君は全てを見通して、超越的に善悪の判断ができるということだね!素晴らしい」
悪魔「それは違う。お前にとって個人的な"悪"をもたらしただけだ」
「それはおかしい。僕にとって何が善で、何が悪かは、死ぬそのときまでわからないし、死ねば全ては無だろ」
悪魔「わかってないなぁ〜。悪魔は刹那的なんだよ。その時お前の感情がネガティヴになればいいのさ。俺は神の奴とは違うのさ」
「では君は……もとい悪魔というのは、悪の代行者の割に人間中心主義的な立場だし、近視眼的なんだね。想像してたんと違うなぁ」
悪魔「そりゃそうだ、悪意は人間から生み出されたようなものだからな。人間の尺度に合わせているのさ。まあ、こちら側からすれば快楽主義だがな。神の側に属するようなもんじゃないのさ」
「なるほど、悪魔はもっと外的な何かだと思っていたけど、ほとんど自分の一部のようなものなのだね」
悪魔「まあそうとも言える。呪いだったら話は別だが。悪魔に関してはそうだ」
「ありがとう、勉強になったよ。君は親切で正直だね」
悪魔「礼には及ばん、俺は悪魔だからな(ん?)」
「言動が矛盾してるなぁ。もはや君は悪魔じゃあないじゃん」
悪魔「あっ、悪魔は嘘つきなのさ」
「もっと気をつけた方がいいよ。君たちと違って、人間はときに大局的な振る舞いをする。その一方で気まぐれなんだ。君たちのように、他人の不幸を啜りたくなるときもあるんだよ」
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