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プラハの若いふたり

古都の香りただよう
プラハのビヤホール

口あたりが良く且つ重たい本場もの
ピルスナーを
ごくごくと喉に流しこんだ

プラハ  カレル橋より旧市街をのぞむ    1995

そこへ栗毛の若い女性が
声をかけてきて
「日本からいらっしゃった方ですか」

今の日本人が忘れたかのような
整った日本語、しかも美人で
聡明な雰囲気の持ち主だ

カレル大学哲学部で
日本学専攻の三年生、名はユリエ

日本人みたいな名前でしょ
と笑った

彼女は
なんと三島由紀夫の
ファンだという

『金閣寺』など二〜三冊
むかし読んだきりで
いまや三島文学は、忘却の彼方……
シンドイ談義であった


プラハの若いふたり  ユリエとアラム           1995


別れ際に一人旅なので
ガイド役を頼むと
明日の午後いいわと
快い返事が返ってきた

翌日、ホテルのロビーに
約束どおり現れたユリエに
若い男がぴったり寄りそっている

今日一日、
知的で魅力的な女性と
一緒できると
勝手に思っていたが……

「私、アラムと申します」
これまた美しい日本語
しかも「アラム・レズネル 日本語通訳」
と書かれた名刺をさっと差し出した
彼もいたく感じが良い

プラハ郊外  電車             読書する女    1995

アラム君の古アパートに
暖房が入ったのが一年まえとか
それでも
氷点下10℃にもなる冬
部屋は暖まらない

赤ワインのホットを飲んで
体を温めるそうだ

アラムとユリエは
恋人の間柄
寒い冬
抱きあえば温かいね
と冷やかしたら二人は……

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