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縄文のヴィーナス
半世紀ほどまえ、
ひとりの主婦がじゃがいも畑で鋤をいれると
ガチっと何かにあたった。
泥をとると人間のような目と鼻があらわれた。
腰をぬかすほどびっくり。
家族は、これ、土偶みたい、と。
函館郊外、昆布の里で知られる南茅部。
太平洋をのぞみ温暖で
豊かな自然にめぐまれている。
3500年まえ、縄文後期、
縄文人がマグロを獲り鹿を狩り、
栗の実をとって住んだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1679267432128-hRZdPKYSXM.jpg?width=1200)
いまは、その遺跡があちこちにある。
そのひとつから中空土偶が姿をあらわした。
発掘から重要文化財、
さらに北海道唯一の国宝となるまで30年あまり。
旧南茅部町の金庫にしまわれ、
「金庫」、「禁錮」30年との冗談も。
南茅部の「茅」と中空土偶の「空」をあわせて
「茅空、カックウ」と親しまれている。
いま、カックウは、函館市縄文文化交流センターで、
暗闇のなかで佇んでいる。
月の明りに見たてた照明で、
縄文人が見たであろう情景を再現している。
ここで、カックウは、自分が生きた満天の星空のもと、
月明りしかない縄文の時をおくっている。
カックウと対面しても、
男なのか、女なのか。よく分からない。
どちらかといえば、女。
全体のフォルムは優美。
やはり、縄文のヴィーナスか。
![](https://assets.st-note.com/img/1679344872483-3xXdM0lTYo.jpg?width=1200)
さらに、もうひとつの見どころは、「足形付土版」。
幼くして亡くなった子どもをしのび
親が作った足形の粘土で、
形見に親とともに埋葬されたという。
子を思う親の気持ちはいつの世でも変わらない。
国宝・カックウは、洞爺湖湖畔で開催されたG8サミットに
お披露目され親善大使をつとめた。
また、大英博物館、スミソニアン博物館など各国を
いそがしく出張している。
2021(令和3)年7月、南茅部の遺跡群が、
世界文化遺産となった。
縄文のヴィーナスは、縄文文化発信の先頭にたっている。
![](https://assets.st-note.com/img/1679344995683-ytG3FCd7vl.jpg?width=1200)