ひと粒のロマネ・コンティ
ロマネ・コンティ1985年。
豊かな香りが鼻先にひろがる。口にふくむと、豊饒、
さらに気品と繊細を感じる。
熟れているが初々さが同居する。
ずいぶんと奥行がある。
20年ほどまえ、一本25万円で仲間5人と割り勘で楽しんだ。
いまでは、200万から300万もする。
このロマネ・コンティは、期待を裏切らなかった。
本音をいえば、極上のいい女に出会った思いで、
今もそれを引きずっている。
2000年9月。
太陽がじりじりと照りつける。30℃はある。
ブルゴーニュのワイン畑では9月中ごろ、
ぶどうの摘みとりがそこかしこで始まっていた。
ぶどうの木からひと粒つまんだ。
ロマネ・コンティひと粒。
肉厚で弾力がある。熟している。
ほどよい甘みと酸味が口なかにひろがった。
さきほど摘んだシャンベルタンより、品の良さと深みがある。
この粒が樽につけこまれ瓶につめられ、長い旅をする。
ワインのなかのワインたる宿命を背負って。
足もとは、白っぽい小石だらけの乾いた赤土。
荒地から銘酒が生まれる不可思議を思い、
土にふれ小石をにぎった。