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函館の市電
現役最古参の市電は、いまだに窓枠が木製だ。
この製造から70年ほどの電車に乗れば、
高校生のころのわが姿が目に浮かぶ。
朝は、イワシの缶詰みたいにすし詰めの電車で登校した。
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函館名物の大火、函館ドック、鮭鱒の北洋漁業、イカ釣り、青函連絡船、赤レンガ倉庫、新幹線……。
この港町の栄枯盛衰を見守りつづけた
市電は、1897(明治30)年、馬車鉄道を起源に開業。
それから125年あまりとなる。
1907(明治40)年、岩手から函館にやってきた石川啄木も
市電に乗ったにちがいない。
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開業100周年をむかえたとき、
復元チンチン電車「箱館ハイカラ號」
色とりどりの造花でかざられ大正時代の花電車のようで、
市民の喝采をあびた。
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今年も「さあさ 浮いた 浮いた 踊りゃんせ
踊る心は やっこらせのせ 波まかせ 波まかせ……」
花電車が、街をめぐって港まつり本番をむかえる。