牡蠣とウイスキー
昔、東京・銀座7丁目にあった立飲みバー「クール」。
え! これってヨードチンキの匂い? まさに病院くさい。
アイラ島のシングルモルト・ウィスキー、ラフロイグ。
バーテンダーの神様といわれた古川緑郎さんのおすすめで出会った
強烈な初体験であった。
アイラ島のシングルモルトにほれ、日本で酒を造ろうとロマンをいだいたひとりの男がいる。樋田恵一。
アイラと同じような風土を日本中探し求めてたどり着いたのが、
厚岸であった。
冷涼で海の霧がでる気候、ピート(泥炭)、清い水と三拍子そろっている。うまい牡蠣もある。
晩秋、厚岸の旅は、牡蠣とウィスキーで一日が暮れた。
これを手助けしてくれたのが、
創業130年のホテルを駅前で営む五味ホテルの五味尚紀さん。
ホテルのバーで厚岸蒸溜所が生み出したばかりの、なかなか手に入らない
ニューボーンの第1弾、第2弾をまだまだ粗削りだが、おおいに楽しんだ。
昔、はるばる離島アイラに渡ろうと思ったのは、密かな思いがあった。
磯の香りの酒を生み出す風土にじかにふれたい。
島の生牡蠣にアイラモルトの女王と言われるボウモアを垂らしてあじわう。
これが「オイスターのボウモアがけ」。
これほどの贅沢があろうか、と。
今回の旅のハイライト。
道の駅コンキリエで
厚岸産の丸く小粒な生牡蠣・カキえもんに
ボウモアを垂らした。
磯の香りがするボウモアと牡蠣の塩味・旨味がみごとにひとつとなり、
今に生きる幸せを思った。
アイラに行けなかったリベンジを果たしたのだ。