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大道芸人 ギリヤーク
自分の風貌が
ロシア・サハリンの先住民族ギリヤーク
そっくりな故に芸名とし
本名は尼ヶ崎勝見
国内外の街頭で踊り狂った
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阪神大震災、東日本大震災の被災地で
鎮魂「祈りの踊り」を舞う
仏、米、中国、韓国、サハリン……
ニューヨークのグランド・ゼロでも鎮魂の舞
では
お巡りさんから踊り禁止を食らった
赤フン一丁はだめよ、と
30代で東京銀座の数寄屋橋で踊って
大道芸人となり50年あまり
投げ銭一本で生きぬいてきた函館生れの93才
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2019年夏、そのギリヤーク尼ヶ崎が
生家ちかくの函館・大門の広場で踊った
広場の分厚い人垣を割って
車椅子に乗ったギリヤークが登場
体が少しずつ動かなくなる
パーキンソン病を患っている
函館生れだからこそ今の自分があると
故郷への思いをしみじみ語ったあと、
車椅子を捨て「念仏じょんがら」
「果し合い」、「じょんがら一代」……
ときには、チベット仏教の五体投地のごとく
地面に身をふせ、観客と手をつなぎ、子供をだきあげ
ぐるりととりまく市民と一つになる
昔はバケツ一杯の水を頭から浴びたが
今はペットボトルの水をぶっかける青空舞踏公演は
拍手と笑いをよびこみ、つぎつきと投げ銭で埋まる
ギリヤークは感極まった
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古里公演の〆は、津軽三味線の二代目・高橋竹山との共演
眼が不自由な初代・高橋竹山が
家々をまわり三味線を弾いて金品をもらい受ける“門付け”を
あらわしたギリヤークの代表作「じょんがら一代」
生の津軽三味線が響きわたるなかで踊りに踊る
故郷に錦を、と
まだまだ未熟、もっと色っぽく踊りたいと
壮絶な生きざまを赤フン一丁で語った