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「西野君、立ってください」 いきなり先生に名前を呼ばれ バネがはじかれたごとく直立不動 「漢詩の出だしを読んでごらん」 ハイ! と元気に返事するも あとが続かない 頭に血がのぼって たった今 教わった読み方が吹っとんだのだ 函館中部高校(函中)に入学早々 漢文の授業で立ち往生したありさまは 60年あまり経った今でも生々しく覚えている おやじにさっそく この一件を話すと そくざに 「俺もおそわった板垣先生で あだ名はジャクだよ」 と 漢文を読むとき 返
第二次大戦が終わり食糧難のころ、 近郊の農家のひとが函館駅前、青函連絡船桟橋のそばで、 野菜を立売りして始まった朝市。 はじめはヤミ市。 魚屋、さらに青森から連絡船でかよう米のかつぎやも現われ 市民の台所となり、やがてメロン、カニも商って観光客が加わった。 朝早く収穫した新鮮な野菜を地べたで売る風情は、朝市そのもの。 男爵いもを茹でるたびに、 白い手ぬぐいで頬かぶりしたお爺ちゃんが売ってくれた、 美味かったじゃがいもを思い出す。 今、朝市には、250軒ほどのお店が軒