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元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑩
【留学は、人生を変えない】
41歳になりました。Facebookでお祝いのメッセージをくださった皆様、ありがとうございました。
さて、僕は、広島県教育委員会で、留学の担当課長もしていました。その時、高校生や教師、保護者に対し、こんな大嘘をついていました。
「留学は、人生を変える」
アメリカに来て半年以上経った今、確信を持って言えます。
「留学は、人生を変えない」
第3回に書いた通り、僕が「留学しよう」と思ったのは、40歳になって「変化を恐れる自分」になってしまったことに気付き、そのことが何より怖くなり、強制的に自分自身を変えるためでした。この時の自分は、留学のことを、何かキラキラした「非日常」のようなものだと思っていました。
しかし実態は、全然違います。全く「非日常」なんかじゃありません。留学の日々は、キラキラした「非日常」ではなく、ドロドロした「日常」の完全に延長線上にあります。
「天国」なんかではありません。むしろ、「地獄」に近いものがあります。
留学した途端、新しい自分が手に入って、日本でできなかったことが急にできるようになったりなんてしません。むしろ、不完全な自分にさらに向き合わさせられ、日本でできたこともできなくなるし、それがいつまで経ってもできるようにならないという、自分の無力さを味わうことになります。周りの学生はキラキラしているのに、いつまで経ってもドロドロしている自分自身が心底イヤになります。
だから、留学は、人生を変えてくれるものなんかじゃないんです。
以前の僕は、留学のことを、ニコニコしながら自分を助けてくれる、天国からの救世主のような存在だと思っていました。いや違う。留学というのは、ものすごーく意地悪な、地獄から来た悪魔のような存在です。
「今日は結構、やりたかったことができた」とわずかな自信を持つと、翌日に、ことごとく覆されます。一瞬でキラキラは壊されます。翌日は、「そうか、あれは単なる錯覚だったのか」と、再び無力な自分の方に戻されます。ドロドロ・アゲインです。
正直、留学というのは、この毎日の繰り返しです。
だから嫌になります。逃げ出したくなります。全部投げ出して日本に帰ってしまいたくなります。「留学が変えてくれると思ったのに、何なんだよこれ」と言いたくなります。
そんな時に、底意地の悪い地獄からの使者、留学がささやくのです。
「なんだまた逃げるのか」と。
「お前はもう逃げたくないから留学に来たんじゃないのか」と。
もう1回言います。
留学は、人生を変えてくれるものではありません。
変えるのは結局、自分自身です。
悪魔はむちゃくちゃ意地が悪いので、時々、希望の光を投げ込んできます。教授が「今日のTak(僕はアメリカでこの名前を使っています)の意見はとてもよかった」と褒めてくれたり、(20代前半の)クラスメートから「すごく成長しているから自信持っていいよ!」と言われたり。まぁでも結局そのあとすぐ落とされるんですけどね。
そんな留学という悪魔に、僕は言いたい。
あなたは、最高の教育者です。留学が終わった時、あなたのような教育者に、僕はなりたい。それが41歳の僕の目標です。まだまだ負けませんよ。これからも、よろしく。