Takuma Terada

元文部科学省のキャリア官僚で、広島県に勤める教育行政官です。長く教育改革の仕事をしてきました。2021年8月から1年半、ミシガン大学教育大学院の修士課程に留学。 Facebook:https://www.facebook.com/takuma.terada.1/

Takuma Terada

元文部科学省のキャリア官僚で、広島県に勤める教育行政官です。長く教育改革の仕事をしてきました。2021年8月から1年半、ミシガン大学教育大学院の修士課程に留学。 Facebook:https://www.facebook.com/takuma.terada.1/

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元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話①

【はじめに】自己紹介とキャリアゴール(子どもの自殺) はじめまして。元文部科学省のキャリア官僚で、広島県で教育行政官をしている寺田と申します。今は、世界一の公立大学である、アメリカはミシガン大学教育大学院の修士課程に留学しています。  最初に簡単に自己紹介です。これまで、文部科学省で10年、広島県でも10年、基本的には「教育改革」の仕事をしてきました。国では、日本全体の教育改革のグランドデザインを描く仕事、広島では「学びの変革」と銘打った教育改革や、広島叡智学園という全寮制

    • 「わたし」がある授業

       少し前に参加した教育シンポジウムで、ある中学校の先生がご自身の授業実践を発表していた。その後、「再現性」の話題になり、「僕の授業は、かなり再現性が低いと思います」と話していて、それを聞いた僕は、すごく学習科学的というか、構成主義的でステキだなと思った。  ここでの「再現性が低い」は、「高度な実践で誰もマネできない」ということではなくて、「違う先生が違うクラスで同じことをやっても、同じ結果にはならない」ということ。なぜなら、そこには、先生にも生徒にも「わたし」を発揮する機会

      • 本が出ました(『教育改革を「改革」する』)

         僕の初の単著が、本日(12/15)発売となりました(全国の書店にも並んでいます)。  タイトルは『教育改革を「改革」する』。  noteで書いてきた内容も一部含まれますが、大半は新しく書き下ろしたものです。巻末には、軽井沢風越学園校長の岩瀬直樹さんとの対談を収録。  推薦コメントは、日本を代表する研究者かつ学校の支援者である、3人の先生からいただきました。  以下、本書の「はじめに」と「目次」をそのまま抜粋します。 はじめに  この本を手に取っていただき、ありがと

        • 元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑲

          【エピローグ】  僕の父親は公立小学校の教師でした。  「でした」と書いたのは、昨年(2021年)6月2日に、66歳で亡くなったからです。  最後に会ったのは2019年の年末、子どもたちも一緒に、みんなでディズニーシーに行った時でした。その後、肺がんという病気が発覚。しかし、コロナが流行し、僕は闘病生活中、一度も見舞いに行くことも、話をすることもできませんでした。葬儀の時、1年半ぶりに会った、もう喋ることのない彼は、信じられないほど痩せていました。  ディズニーシー近く

        • 固定された記事

        元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話①

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑱

          【学校を、もっともっと「自由な場」にするために】  お陰様で、無事に大学院を卒業することができました(何とか全教科で最高評価をもらい、GPAも4.0で終えることができました)。3日後には、日本に帰国します。留学という「永遠に続いてほしいと思えるような地獄の毎日」も、いよいよ終わりを迎えます。  この1年半、僕はここアメリカで、学習科学を、テクノロジーを、Learning Experience Designを、そして教育改革を学んできました。すべては、第1回に書いたように、学

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑱

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑰

          【テレビの企画で、イジメを受けている中高生と対談して】  僕は、2004年に文部科学省に入省しました。そして、入省9年目、教育改革の司令塔を担当していた時に、次のようなことがありました。  当時部下だった後輩が、縁あって、テレビ番組に出演させてもらえることになったのです。この番組は、若者たちの「リアルな姿」に迫るドキュメンタリー番組で、約半年間にわたり、継続して、文部科学省の若手キャリア官僚の「素顔」を取材してくれました。  彼に与えられたテーマは、「みんなが笑顔で通うこと

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑰

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑯

          【病院生活よりも息苦しかった、僕の「小学校生活」】  アメリカで教育を勉強し始めて、約1年間が経ちました。最近、愚痴っぽい文章が多かったですが(スミマセン…)、そろそろ勉強の成果を記すためにも、最初に書いた「子どもの自殺をゼロにする」という夢と、「学校を、もっともっと『自由な場』にする」というビジョンを実現するために、これから僕自身が何をしていきたいのかということを書いていきたいと思います。  しかしその前に、なぜ上記のような考えを持つに至ったのか、僕自身の原体験を2つ、

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑯

          コロナ報道の「ゴール」って?

           メディアに勤務する素晴らしい友人もたくさんいますし、基本的にメディアを批判しても自己満足感が得られるだけで何も始まらないと考えているので、普段はメディア批判をしないように心掛けているのですが、アメリカから見える日本の現状に危機感を感じたので、敢えて書いてみます。  すべてのメディアの皆さんに問いたい。  皆さんが行うコロナ報道の「ゴール」とは、いったい何ですか?何を目指して、そのコロナ報道を行うのですか?  アメリカの現状は、この記事でコロンビア大学のお医者さんが仰って

          コロナ報道の「ゴール」って?

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑮

          【善意の生徒指導と、教師へのリスペクト】  佐々木朗希投手と白井球審のトラブルが話題になっています。  今回は、この件を、学校教育の観点から分析してみたいと思います。なぜなら、この件は、学校における生徒指導の構造と、とてもよく似ていると思うからです。  今回のトラブルと、学校における生徒指導の最大の共通点、それは「完全なる善意」ということです。白井球審が「激高して」とか「我を失って」とか色々言われていますが、僕は、結構冷静だったのではないかと推測しています。つまり、根底

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑮

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑭

          【原因と結果がごちゃ混ぜの教育論議】  お読みの方もおられるかもしれませんが、こんな記事があります。  いわく「学校にデジタル教科書を導入したら、子どもたちが授業中に、ネットの動画やゲームに没頭するようになり、授業が成立しなくなった」とのこと。  この記事を読んでいて、ある事を思い出しました。  今からもう20年ぐらい前、当時、品川区の教育長だった、若月秀夫さんの講演を聞きに行きました。テーマは「学校選択制」について。そこで、会場から「学校選択制を導入すると、学校間の格差

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑭

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑬

          【マイノリティになる経験】  絶賛試験期間中です。1日に18時間ぐらい勉強してます。それでも課題が終わりません(なのに(なので)現実逃避でこの原稿を書いています)。  最近思うのですが、教育者にとっての留学の最大の意義って、英語を学べることでも、異文化を理解できることでも、国籍を超えた友人を作れることでもなくて、実は「マイノリティになれること」にあるのではないかと。  ミシガン大学教育大学院の授業でグループワークをすると、たいてい、①唯一の日本人、②唯一の40代、③唯一

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑬

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑫

          【個別最適で協働的な学び】  最初に、ぜひ以下のFacebookの投稿をお読みください。  1年半前に書いたものですが、「個別最適な学び」に関する僕の基本的な考えは、ここから変わっていません。   今回は、この続編になります。 ではまず、以下の画像をご覧ください。 (出典:https://www.youtube.com/watch?v=jTH3ob1IRFo) 次に、以下の記事に掲載されている画像をご覧ください  さて皆さん、上記の2つの画像は、本質的に同じだと思

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑫

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑪

          【なぜ「教育改革」は難しいのか(その2)】  それは、「教育改革者は、排他的にならざるを得ないから」です。  排他的になりたくてなっているわけではありません。排他的にならざるを得ないのです。  教育改革者は、基本的につるみます。「教育ムラ」という言葉がありますが、教育改革者は、「教育ムラ」の中で教育改革を進める人たちとつるむか、あるいは、「教育ムラ」のアンチテーゼとして、その外でつるみます。いずれにしても、結局同じような意見を持った人たちの集まりとなるので、その影響力は

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑪

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑩

          【留学は、人生を変えない】  41歳になりました。Facebookでお祝いのメッセージをくださった皆様、ありがとうございました。  さて、僕は、広島県教育委員会で、留学の担当課長もしていました。その時、高校生や教師、保護者に対し、こんな大嘘をついていました。 「留学は、人生を変える」  アメリカに来て半年以上経った今、確信を持って言えます。 「留学は、人生を変えない」  第3回に書いた通り、僕が「留学しよう」と思ったのは、40歳になって「変化を恐れる自分」になって

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑩

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑨

          【アメリカの公立小学校の学校説明会に参加して】  子どもたちの関係で、アメリカの公立小学校の学校説明会(オンライン)に参加する機会がありました。これがまた全然日本と違う!なんだか如実に日米の学校「文化」の違いが出ていたような気がするので、以下にまとめてみました(これが一般的なアメリカの学校の様子なのか、私たちの学校が特殊なのかは分かりませんので、その点はあしからず)。 ① 説明30分、質疑応答60分  日本の場合、説明が大半で、質疑応答の時間はほとんどないのが普通ではない

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑨

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑧

          【教師と生徒の関係は、「運動部の後輩いじめ」と同じ】  Twitterでバズったこのツイート、悲しくも「あー、分かるー…」と思いながら読みました。なので今回は、校則や指導についてです。  さて、僕が所属するミシガン大学教育大学院は、全米でも有数の「DIJE」(多様性・包摂・正義・公正=Diversity/Inclusion/Justice/Equity)を重視した大学院です。このため、「社会の不公正さに立ち向かうため、教育者は何をすべきか」という問いに、学生は何度も何度も向

          元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑧